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WordCamp US 2016に行って感じたTokyoとの違い

高橋文樹 高橋文樹

この投稿は 7年 前に公開されました。いまではもう無効になった内容を含んでいるかもしれないことをご了承ください。

一昨日WordPress 4.7がリリースされましたね。僕もコアコントリビューターとして名前が載ったぞー!

貢献の内容自体は大したものではありません

というわけで、WordCamp US 2016に参加し、ちょうど昨日アメリカから帰ってきたわけので、その感想をば。ちなみにこの記事はWordPress Advent Calendar 2016の8日目の記事です。

WordCamp USに参加しようと思った理由

僕は今年のWordCamp Tokyo 2016の実行委員長だったのですが、諸事情ありまして立候補というよりは、なんか結果的にやることになったので、せっかく自分が関わるようになったイベントだから、本場のやつを見にこうと思ったわけであります。

あとは、以前WordPress.comのVIPサービスについて記事を書いたこともありますが、アメリカの方が全然ビジネスとしての規模が大きいのではないかという予想もあり、その視察も兼ねておりました。

そんなわけで、以下トピック別に紹介して行きたいと思います。

WordCampとしてのコンテンツの違い

WordCamp USは1・2日目がセッション、3日目がコントリビューターデイとなっています。参加者は2,000人弱で東京の倍ぐらいの規模です。

セッションの違い

セッションの内容が質的に違うかというとそんなことはなく、東京とそんな変わんないですね。今年のWordCamp Tokyoではまるまるグローバルトラックを用意したこともあって、リードデベロッパーやチームリードなどの「ロックスター」の話が聞けるという点では遜色ないと思いました。

こういう人がそこら中にいる

いちばんの違いはUSだとわりとふわっとした話が多いことでしょうか。これは批判的な意味ではなく、概念的・理念的な話が多いという意味です。日本のWordPressコミュニティのセッションだと、実際のコードとかをスライドに含めて「こうするとこうなる」みたいな話が多いですが、もっとずっとふわっとしてましたね。これはお国柄の違いでしょうか。

ちなみに、今年のWordCamp Tokyoでは、「専門的・技術的な内容にこだわらず、利用者や運用者向けのコンテンツを増やそう」という裏テーマを掲げてセッションを組んで行ったのですが、ふたを開けて見たら例年と変わらず技術的な内容が人気でしたが、これが告知不足によるものなのか、それとも興味の対象がそうなのか、どっちかはわかりません。

コントリビューターデイの違い

東京のコントリビューターデイでは「コントリビュートしたことのない人を巻き込む」というテーマで行い、これはこれでうまくいったと思うのですが、USのコントリビューターデイはほぼもくもく会でしたね。一応、初心者向けの説明もありましたが、みんな黙って作業してました。かなりハードコアです。

ちなみに僕は宮内さんと一緒にテーマレビューの自動化に取り組んでいました。一日中NodeJSのJavascriptを書き続けるという作業でしたね、ハイ。PHPは一行も書きませんでした。なにができるかはお楽しみに。

State of the Word

WordCamp USではState of the Word(State of the Art=「最先端」のもじり)という名目で、共同創業者であるMatt Mullenwegのありがたい話が聞けます。

Mattの登場を待つみなさん

主な話題としてはこんなものがありました。

  • コントリビューターへの賛辞
  • コミュニティの拡大について
  • リリースサイクルが4ヶ月に1度じゃなくなる
  • WordCampがNPO法人化PBC化してWordPress Foundationとは別の窓口になる(辺境の民からタレコミあったのですが、Public Benefit Corporationという法人格があるようです。出典はこちら
  • 4.7の新機能紹介(ここだけリリース・リードのヘレンさん)

というわけで、去年の”Learn Javascript, Deeply”とかよりは地味な話が多かったです。

全体的には東京の倍の規模であるということから予想されるほどコンテンツの質は違わないです。ただし、やはりオールスターが集う場所ではあるわけで、リリースリードの経験者とか、リードデベロッパー、創業者など、WordPressの中心にいる人たちがそこら中にごろごろいるので、それは最大の違いです。

食べ物

コーヒーは飲み放題。アフターパーティーも無料で、ランチも付いています。ここら辺は東京も見習いたいですね。ただし、参加費がそもそも違うので、なんとも言えません。

無料のランチ

マーケット規模の話

さて、WordCampの規模としては人数だけ見れば倍なのですが、マーケット規模というか、動いている金の違いはすごく感じました。

スポンサー

スポンサーは公式サイトに料金が書いてあるのですが、めちゃくちゃ高いです。日本だとゴールドスポンサーでも50万円なのですが、一番上のランクは10万ドル、つまり1,000万円超! すごい違い。

ちなみに僕は一番安いスポンサー$250で参加。

ちなみに、我らが日本からも、おなじみDigital CubeさんがQueen Villageスポンサーとして出ていました。なんと、5万ドル。儲かってまんなぁ……。ちなみに紹介していたサービスはShifterといって、AWSのサーバレスアーキテクチャでWordPressをホスティングすることにより、メンテナンスコストを限りなく下げるサービスです。

あと、ビッグイシューとしてはPantheonというホスティング会社がホテルに広告を出してスポンサーとして垢BANされるという事件があり、当日ざわついていました。詳しくはWP Tavernの記事”Pantheon’s $100K WordCamp US Sponsorship Revoked the Night Before the Event“をごらんください。WordCamp Tokyoで同様の事件があったとしても、僕はたぶん垢バンしなかったと思いますがね。「勘弁してくださいよ〜」ぐらいで終わりかと。ま、ここら辺はまだ議論が続いているようで、アメリカのコミュニティでも「なんでいけないの?」という意見が上がっていることは付記しておきます。

基本的にスポンサーさんはホスティングサービスが多かったです。ホスティング以外は3つぐらいしかブース出してなかったんじゃないかな?

あと、ノベルティはめちゃくちゃもらえます。Tシャツも10枚ぐらいもらいました。

わぷーのぬいぐるみ。子供大喜び!

メディア

ホスティングサービス以外にどんなプレイヤーがいるのかというと、まず、WordPressの専門メディアがいます。具体的には上に挙げたWP TavernPostStatusなどです。これは日本との一番の違いじゃないでしょうか。日本にそういうのないですよね?

ただ、別にめちゃくちゃ儲かっているわけではなくて、WP TavernなんかはAutomatticの傘下に入って存続したはずなので、「メディアは儲からない」というのは万国共通の様子。どこぞのWelqみたいにパクってたら儲かるかもしれませんが。ただ、取材をしたりする専門メディアが存在しているのはいいことだと思うので、日本にもそういうのあったらなぁとは思いました。いっちょやってみますかね。

プレミアムプラグイン・テーマ販売事業者

Pippinという有料プラグインで儲かってる人がいるのですが、その人のセッションを聞けたのはよかったですね。ただし、楽ではない様子。フリーミアムはやめとけって言ってました。儲かるまで規模を拡大する前に力つきるようです。

受託

受託と呼んでいいのかわかりませんが、いわゆるWordPressコンサルタントもたくさんいました。特に大手としてはHuman Made(アパレルじゃないよ)、10UPなどです。ここら辺の会社はWordPress VIPのパートナーだったりします。コアコントリビューターもたくさん抱えており、一説によると、最近はAutomatticより10UPの方がたくさん貢献してるのだとか。

あと、以前VIPの記事書いた時に「やっぱ本場はすげーな」と思ったのですが、色々話を聞いてみたら、アメリカにもサイト一個10万で作ってる人いっぱいいましたし、給料安いWebデザイナーもいました。安心しました。

コミュニケーションの話

さて、僕が今回WordCamp USに参加してみようと思ったのは東京で実行委員長をやって「よその国はどんな感じなの?」という興味を覚えたからなのですが、やはりコミュニケーションにおいては色々と思うことがありました。

アフターパーティの会場。シャレオツ・オブ・シャレオツ。

英語力

WordPressというトピックに関するコミュニケーションがほとんどなので、それほど英語力が優れていなくてもなんとかなります。ただ、片言だとさすがに向こうもめんどくさいでしょうから、あとは話す内容とのトレードオフですね。時価総額2,000億のベンチャーのCEOとかだったら英語話せなくても大丈夫でしょうが、そうじゃない場合は最低限のコミュ力が必要です。

紹介が必須

雑談の中で、とあるグローバルな方に「アメリカは見知らぬ人を歓迎しない社会だから紹介は必須」というような意見を聞いて感心したのですが、たしかに初対面のハードルは日本より高い印象です。

僕の場合は幸いにして串本の宮内さんや男木島の西川さんと知り合いだったので(なぜか辺境の民ばかり)、彼らが色々と紹介してくれて助けられましたが(ありがとうございました)、そうでないとかなりの突破力が求められます。

あとはまあ、WordCamp Tokyoの実行委員長を経験しているということもあり、世界で3番目の規模のWordCampをオーガナイズしたということが評価ポイントになるようで、自己紹介が楽でした。普通に自己紹介するとなると、小説家で、WordPressのプラグインいくつか出してて、受託で飯を食いつつ、山梨で家作ってて、とか属性盛りすぎでわけわかんなくなりますからね。

飲みニケーションは万国共通

アフターパーティーは博物館の中で行われ、ハイパー・シャレオツ感満載だったのですが、普通にコミュ力は問われますね。黙々とコードを書いていたら周りから声をかけられるということはありません。アメリカ人だからといってみんながみんなコミュ力が高いわけではなく、ボッチになってる人もいました。

実は前日、スポンサー主催のパーティー(※そこかしこで色んなパーティがある)直前にちょっと時間が空いていたので、軽く飲みに行っていたのですが、その場で「WordPressコミュニティでは、もっとコードを書いている人にスポットライトが当たるべきでは?」という議論が沸き起こりました。日本のWordPressコミュニティに詳しい人は何をいわんとしているかわかるでしょう。

しかしですね、その後のアフターパーティで、よりによってその議論に参加していた大串さんがスポットライトを浴びることになります。理由はカラオケが面白かったから。カラオケコーナーがあったのですが、そこでブルーノ・マーズ歌ったらですね、爆盛り上がりしたんですよ。

TwitterでWordCamp USの実行委員長(だよね?)に捕捉されたりしています。

翌日のコントリビューターデイでもいろんな人に話しかけられて、なんというか、昨日俺たちが議論したことはなんだったんだって話ですよ。ほんとに。

最終日なんて、一緒にカラオケしたいって五人ぐらい知らない人が混じってきましたからね。よそのパーティ蹴ってまで来た人がいたことには感動さえ覚えました。

連絡先を聞かれるロックスターMGN

一応、大串さんの名誉のためにも書いておきますが、彼はWordCamp Tokyoの実行委員長も経験していますし、テーマレビューもやったり、コアにパッチ送ったりもしてますので、コミュ力だけでのし上がったわけではないですが、「コミュニティ内における評価」という意味ではカラオケの方がテーマレビューの1,000倍ぐらい価値があることが立証されてしまったような気もします。

まあ、僕としては2001年に綿矢りさと同じ月にデビューして黙殺された経験があるので、「コードを黙々と書いて貢献している人にスポットライトが当たらない問題」については「そういうもんでしょう」と達観しているのですが、ソフトウェアの品質としては「OpenSSLのメンテナ全然いなかった問題」に通じるようなことがないといいなと危惧しています。

なんかうまい方法があったらいいと思うんですけどね。ここら辺は議論の余地がたくさんあると思うので、ご意見ある方はコメントなどください。

余談:イベントの色

これは僕の完全な私見であり、どこかからマサカリが飛んでくるかもしれませんが、WordCamp USって、Automattic、つまりMattさんのイベントなんですよね。サイトにも思いっきり書いてあるし。

実はこのWordCamp USのついでにPostStatusのイベントPostStatusPublishにも参加したのですが、それは要するにHuman Madeのイベントだったようです。ここらへんのカラーの違いも面白いですね。

僕はこれを悪いことだとは思ってなくて、誰かしらそのイベントに意味を持たせようとするからこそ質が上がっていくわけで、日本でもちゃんとしたビジネス的な意味が生まれて、それを主体的に引き受ける企業があったらもっとよくなると思っています。もちろん、コミュニティにはいろんな人がいるので、うまく付き合っていく必要はあるのですが。

ま、ここら辺は完全に一個人の意見です。

上記の他にも「へー」と思ったことはたくさんあるのですが、長くなるので別の機会に。けっこう面白かったので、来年のWordCamp EUにも行く予定です。終わり。明日は96kuroguroさんです。

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