この投稿は3年半前の記事です。 情報が古くなっている可能性があるので、その点ご了承ください。
2013 年 6 月 8 日 1,421日前)
1,240文字 (読了時間3分)

SPONSORED LINK

先日(といってもかなり前ですが)、母校の東大仏文科の集まりに参加して、恩師の塚本先生から『フランス組曲』という本を薦められました。野崎先生が訳しているので、多少盛ってるのかなーと思ったのですが、これがなかなかどうして心揺さぶられるものだったのでご紹介します。

フランス組曲

フランス組曲 [書籍]

著者イレーヌ ネミロフスキー

クリエーター野崎 歓, 平岡 敦

出版社白水社

出版日2012 年 10 月 25 日

商品カテゴリー単行本

ページ数566

ISBN4560082456

Supported by amazon Product Advertising API

さて、件の『フランス組曲』ですが、作家のイレーヌ・ネミロフスキーはロシア系ユダヤ人で、フランスの女流作家です。で、すでに故人で、その死んだ場所はアウシュビッツです。

KZ Mauthausen, Sowjetische Kriegsgefangene
KZ Mauthausen, Sowjetische Kriegsgefangene

ネミロフスキーは強制収容所に連行される前、家族にトランクを託しました。そしてその後、夫もまた強制収容所に連行されることになるわけですが、夫は残された娘達にこう伝えます。

「決して手放してはいけないよ、この中にはお母さんのノートが入っているのだから」

イレーヌ・ネミロフスキー『フランス組曲』白水社、2012、P.552

残された娘達は心ある後見人のおかげで戦後まで生き延びます。しかし、その後長くノートを開かずじまいでした。母の日記を覗き見ることはできない、という子供らしい遠慮からです。

そしてそれから数十年の時を経た2004年、そのノートは実のところ、母が生前、迫り来る死の予感を打ち消すようにして書いた一編の小説だったことがわかります。それも、女流作家畢生の長編小説でした。

この本はフランスで出版されるやたちまちベストセラーとなり、その後各国で翻訳され、全米で100万部以上売れたそうです。

こういう話を聞くにつれ、本当の才能は運命だったのだな、というのはいつも思います。努力はやろうと思えばできますが、運命だけはどうにもならない。己の努力を誇っているうちはまだまだひよっこ、結局は運命だったのだと受け入れることこそが人を本当に強くするのだなーと思いました。

まあ、小説自体は20世紀初頭のフランス文学っぽい感じなのですが(バルザック風の人間分析が随所に入ってたりとか)、ナチスの侵略に怯えた人々が橋を渡れずにやきもきするところなどは、先の震災で交通渋滞にあった人なら相当のリアリティを持って読めることでしょう。

ちなみになんですが、なんで日本の小説って解説を最後に書くんでしょうね。もったいつけすぎじゃないでしょうか。よその国ではたいてい序文というものがあって、この本がいかに読むに値するかを訴えかけるという営業努力をしていますよね。

少なくとも、『フランス組曲』に関しては、この本がどのようにして生まれたかということを知ってから読んだ方が面白いはずです。終わり。

 

フォローしてください

ここで会ったのもなにかの縁。
高橋文樹.comの最新情報を見逃さないためにもフォローをお願いします。
めったに送らないメルマガもあります。

SPONSORED LINK

この記事について

この記事はが2013 年 6 月 8 日に読書日記の記事として公開しました。

高橋先生の電子書籍

高橋先生の電子書籍

Amazonで電子書籍も買えます。

好きな言葉

「せずにすめばありがたいのですが」
「頼めないのか」
「せずにすめばありがたいのです」

— ハーマン・メルヴィル

高橋先生の処女作

『途中下車』高橋文樹

2001年幻冬舎NET学生文学大賞受賞作です。

Web制作やります

Web制作やります

Web制作のご依頼は株式会社破滅派へ

不定期メルマガ

高橋文樹.comでは、不定期でニュースレターを配信しています。滅多に送らないので是非購読してください。

高橋文樹.comではプライバシーポリシーに準じて登録情報を取り扱います。