このサイトでも電子書籍は売ってますが、よそ様の電子書籍を買わないのも変な話なので、買ってみました。技術評論社の「Facebookアプリ開発徹底入門」ePubです。
本来書評というモノは内容を云々するものですが、電子書籍に限ってはまだ内容以外の部分が重要かなと思いますので、そちらから雑感を書いてみます。
購入に至った動機と価格について
現在このサイトで電子書籍は売っていますが、いちいちユーザー登録してもらわないと買ってもらえない(電子書籍は大体そうだと思いますが)ので、FacebookとかTwitterでログインできるようにしたいと思っていました。
ただFacebookの場合はソーシャルグラフAPIとか、ファンゲートとか面白そうな機能が沢山あるので、もうちょっと体系的に学べる情報が欲しいなーと思っていたところでした。
色々ググった結果、The blog of H.Fujimotoというブログを発見。このブログにFacebookアプリ開発の情報は沢山書いてあったのですが、技術評論社の電子書籍販売サイトGIHYO DIGITAL PUBLISHINGから電子書籍を出しているというのでチェックしてみました。この手の専門書としては1,000円という低価格だったのでその場で購入。一応リアル書籍も調べてみましたが、大体2,000円代後半でした。この価格差は魅力的ですね。
価格¥1
順位558,961位
著株式会社鳥人間 郷田まり子
発行アスキー・メディアワークス
発売日2011 年 4 月 27 日
読書体験について
複数端末での読書
iPadおよびiPhoneのiBooksに入れて読んだのですが、これ自体はそんなに不便ではなかったです。いまではiOS5 & iCloudが出たので、ブックマークも同期できるようになりました。まだここら辺の同期にはKindleに一日の長がありますが、ないよりははるかにマシです。
iPhoneでの読書
移動中はiPhone、家ではiPadで読んだのですが、iPhoneだとこの手のコードが書いてある本はちょっと辛いですね。インデントなどで整形されたコードもiPhoneの縦画面で見ると折り返しまくりで見辛いです。iPhone4だとRetinaディスプレイなので文字サイズ最小にしても視認性は高いですが、コードは見辛いです。これはもうしょうがないですね。
検索性
iBooksの検索はもっさりしてました。ちょっと残念ですね。
ただ、個人的には「書籍内全文検索」ってあんまり使わないかなーと。よっぽどの大著なら別ですけど、そういう書籍はだいたい辞書やリファレンスだと思いますので、索引や目次などがしっかりしているでしょう。それよりは本棚検索というか、「こういうことが書いてある本ってどれだっけ?」という機能が重要な気がします。
目次はしっかりリンクが貼ってあって便利でした。
その他見映え上の感想
基本的にはきちんとデザインされたものでしたが、ビューアーの制約などもあるので、幾つか。
テキスト両端揃え
iBooksは日本語の両端揃えができず、半角スペースなどでしか字間が調整されなかったのですが、この書籍ではすべての読点をカンマにし、半角英数の前後にスペースを入れることで調整しています。
ただし、iOS5のiBooksはどうやら日本語の両端揃えに対応したようですので、これも今となってはバッドノウハウですね。僕も自分のePubを直そうと思ってます。
表組
表組は情報を見やすく整理するための工夫ですが、iPhoneだとあんまり見やすくないですね。項目の内容が増えてしまうと、とたんに見にくくなってしまいます。ページにまたがると項目名が見えないとか、しょっちゅう起きてました。「表組を使った方がいいケース」はかなり限られてくるのではないでしょうか。
内容についての感想
「Facebookアプリ開発徹底入門」がカバーしている範囲はその名の通り、Facebookアプリケーション開発の基本についてです。Web上の情報を検索して個別のハックを学んでいくより、ざっと概要を学んで基本は全部抑えておきたいという方にオススメです。
PC用アプリケーションが.NETなのは少し残念でしたが、それ以外は必要なポイントを抑えてあります。
個人的に役立ったのはFacebookアプリを作るにあたってのパーミッションの概念と、付録についていたFQLリファレンスでした。FQLというのはFacebook上のユーザーデータをSQLのように取得できる機能なのですが、これについての解説が助かりました。
成果物 WP Gianism
僕もこれを読み終え、簡単なアプリケーションを作ることができました。まだ途中なのですが、FacebookでWordPressへのログイン・会員登録ができるプラグインです。プラグイン名WP Gianismには「おまえのものは俺のもの」ということで、よそのWebサービスのユーザー情報を自分のもののように使うという意味を込めてます。これだけ名前で滑っているプラグインを僕は見たことがありません。
なにはともあれ、このプラグインを作ったおかげで高橋文樹ファンページとWordPressを連携させることができました。WordPressに会員登録してさらに「いいね!」してくれた人を判別できます。あとはプレゼントを渡すだけなんですが、プレゼントを準備している最中なので、今はなにもありません。
プラグイン自体はまだ未完成なのですが、使いたい人はここからダウンロードしてください。Twitter連携できるようになったら公式リポジトリに上げます。
その他雑感
僕はこれまで「専門書などのニーズが小さく利益率の低いものは電子書籍に向いていて、大衆向けなどのマーケットが大きいものは利益率の高い紙の書籍で儲けるのがよい」と漠然と思っていたのですが、最近はそうでもないのかなーと考えています。
クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」には、破壊的な新技術によって陳腐化された旧技術の成功者は高級化・ハイエンド路線をとりやすいと書いてありましたからね。入門書・新書・文庫などのローエンド市場を電子書籍が低価格で蹂躙して、高価な専門書を紙で出すように変わっていくような気が最近はしています。
「有力企業がいとも簡単にハイエンド市場へと移行できるのはなぜか。下の市場へ移動することがこれほど難しいのはなぜか」クレイトン・クリステンセン著 伊豆原弓訳『イノベーションのジレンマ』翔泳社、2001年
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