STAP

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2014 年 4 月 19 日 1,107日前)
3,831文字 (読了時間9分)

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STAP細胞の件について、まだ議論が続いていることが興味深かったので、それについてしたためます。主にFacebook上で気になった意見は次のやつですね。

  1. 問題は論文の質などという些末なことではなくSTAP細胞の存在可否である
  2. 論文に多少の不正があってもSTAP細胞は素晴らしい発見なのだから許容すべき
  3. (レシピは別にあるという意見を受けて)莫大な利益をもたらすSTAP細胞の生成レシピを論文に書いたらパクられちゃうじゃん

これについて僕なりに対論を考えてみました。

1. 論文の質が低いとは、科学的にはSTAP細胞が存在しないことを意味する

科学において、なんらかの存在証明をする唯一の方法は論文を正規の手続きで書き、しかるべき承認(ex. 専門家による査読、他者による現象の再現)を受けることです。その論文が正規の手続きに則っておらず、不正があったのだからその論文は正しくないということになります。唯一の存在証明が正しくないのだから、「存在しない」ということになります。少なくとも、いまは。

専門家ではない人がSTAP細胞の存在可否について考えるのはあまり意味がありません。そもそもSTAP細胞が騒がれたのは「作成に成功」と報じられたからであり、再現実験も成功せず、どうやら作成に成功してないっぽい今となってはそもそも取り上げる必要すらありません。

おそらくですが、再生医療分野においてSTAP細胞以外にも「画期的なアイデア」というのはあるはずで、そういうのを素人が一々検討してるかっていうと、してないですよね。仮に検討したところで「理解できない」で終わりだと思われます。バカの考え休むに似たり。実現していないアイデアは存在しないのと同じ。

2. 論文に不正があることを許容してはいけない

そもそも小保方さんが注目されたのは『Nature』に掲載されたからです。では、なぜ『Nature』に載ると凄いのか? それは『Nature』が学問的に権威のある論文誌であり、長い歴史を持っているからです。

こうした論文誌には「査読」という過程が必ず存在します。この論文はわざわざ掲載する価値があるかどうかを実際に読んで見極め、その歴史的な積み重なりが権威の源泉でもあるのですが、ではそのような「査読」をすることができる人は誰なのか?

それは専門家に決まってるでしょう。暇で暇でしょうがないそこら辺の素人を捕まえて査読しているわけがありません。当然、その業界に通暁した人が論文を読むのであり、それには時間や労力や能力、つまりコストがかかります。

論文の査読ってわりとギャンブル的な作業だと思うんですよ。出版社の編集者が持ち込み原稿とかを読むのに似ているのですが、いいのかどうかよくわからないものに対して時間というコストを払うわけです。出版社の場合、そのコストを払うことは投資であって、才能ある著者を一本釣りできて長く関係を結ぶことができれば最終的なリターンは見込めるからガタガタ言わないでやるべきなのですが、学問の場合はもうちょっとボランティア的な位置づけになっていると思います。

僕はアカデミズムの人間ではないのでよく知りませんが、「俺が『Nature』で査読すると時給500万円、俺と同じ額を稼ぐのはアヴィーチーだけ」みたいなことはないと思います。小説の場合でも、新人賞の下読みとかそういう面倒くさい作業も有名な文芸評論家とか、昔売れていたけどいま売れていない作家が、バイトみたいな報酬でやってたりしますし。オープンソースソフトウェアのメンテナとかも無償でやる人がいますよね(Linuxカーネル貢献者の8割超はいまや会社勤めの人らしいので、これは出版社と同じ投資にあたります)

いずれにせよ、「後進のために時間を割いて論文読んでやろう、そうすることで世界は少しでも良くなっていくはずだから」みたいな心意気を持った人が、ある種のやりがい搾取を積極的に引き受けることで、査読のような制度が成立しているはずです。中には功名心や所属する組織(ex. 大学)で強制されているからやっているという人もいるでしょうが、「科学教」の教理として制度化されてはいるわけです。

で、善意ベースに成り立っているコミュニティにPhotoshopの合成画像とかぶっこまれるとメンドクサイわけです。世界でも指折りの知的な人物が善意で時間を割いているのに、合成画像かどうか一々検証するのは社会的な損失です。悪意がなかったかあったかはわりとどうでもよくて、「余計なコストがかかる行為がまかり通るのをよしとしない」という倫理による支配を徹底すべきですね。画像や文章の盗用を自動検出する技術も進んでおり、それはそれで水際作戦として採用していくべきだとは思いますが、それも研究者の倫理に対する補完的な位置づけであるべきです。

研究者としての道を断たれるべきかどうかについては議論の余地があるかと思いますので、執行猶予にするのか実刑判決なのかはケースバイケースで決めたらいいと思います。STAP細胞のケースは実刑判決でいいんじゃないでしょうか。研究者の椅子取りゲームも大変だろうから、生き残った人はそれなりに責を負うべきですね。

3. レシピもあわせて特許取らないと意味ない

「特別なレシピやコツのようなものがあって」とか後から言われても、再現実験を試みた他の研究者は「それも書いといてよ……」としか言いようがないですよね。Webサイト制作に喩えるとこんな感じです。

制作者「新しい機能を検証環境にアップロードしました。ご確認お願いします!」

依頼者「確認しましたが、できていませんでしたよ?」

制作者「申し訳ありません、ファイルを1つアップロードし忘れていました」

依頼者「え、じゃあ早くアップロードしてくださいよ。さっきの確認の時間が無駄になっちゃったじゃないですか」

制作者「今はアップロードはできません。もう帰宅してしまったので」

依頼者「……わかりました。では、こちらで作業しますので、どのファイルのどの行をどのように変えたか教えてください」

制作者「それは言えません!」

依頼者「え?」

制作者「私はすでに200回以上確認しています。納品書にハンコお願いします! 来月末に振込お願い致します!」

依頼者「」

まあ、ビジネスの世界なら「こやつめハハハ」で終わるのか、もう二度と使わないか、これまでの納品物に対する瑕疵担保を制作者のコストでもう一回全部やらせるか、といった反応が分かれると思うのですが、ボランティアベースでやっているところにこういう人が紛れ込むのは困るので、全力でパージした方がいいですね。

で、「レシピは隠しとかないと特許的に云々」という意見ですが、そのレシピで別の人が特許取っちゃったらどうするんですかね。儲からなくなっちゃいますよ。

僕も特許ビジネスに詳しいわけではないですが、特許取るときにレシピがそんなに画期的な内容なら、それも特許に含めるじゃないですか。それに特許というのはカバー範囲が大きければ大きいほどいいわけで、そのレシピとやらを包含する抽象的な範囲で特許を取得済みなのでは? 別のレシピ見つかったからもうパテント料払いませんとか言われたら困るし。

これに関しては典型的な陰謀論というヤツですね。ただし、陰謀論の困るところは「表向きはそうなっているが、実は裏ではこうなっている、それがこの業界の裏ルール、知らないヤツはバカ」という論法それ自体であって、これを否定するのは悪魔の証明なんで説得するのもメンドクサイんですよね。

 

僕の意見としては上記の通りです。

SNS上で「コイツ何言ってんだバカじゃねーの、dislikeボタンあったら押してるわ」と思う一方、そもそも科学的なプロセスを尊重したい人というのはものすごく少数なのであって、得られる利益(ex. 国威発揚、寿命伸びる、若い女カワイイ)の方が信じるに値するものなんだなーと感じました。

それ自体は人間の深い業なので特に批判しようとも思わないのですが、国立大学の独立行政法人化などを経て、そうした人たちがステークホルダーとして発言権を持つようになった昨今、なんというか、大変ですね。

たとえば、東大のどっかの研究室にすごい醜悪な外見で、在日三世の冴えないポスドク中年がいたとするじゃないですか。禿でデブで臭そうで。そんな人でも画期的な研究を残せば賞賛の拍手が寄せられるのが美しい社会だと思うんですが、どうもそうならなそうですね。Twitterでネトウヨにフルボッコにされそうで、想像しただけですでにかわいそうです。

こういう気付きがあるからSNSはやめられないですね。特にFacebookは最高ですよ。

真理を追究する人に幸大からんことを。冒涜的メソドロジーによって制度をハックしていこうとする悪しきクラッカーどもに裁きの雷が降り注がんことを。終わり。

小保方晴子さん守護霊インタビュー それでも「STAP細胞」は存在する (OR books)

小保方晴子さん守護霊インタビュー それでも「STAP細胞」は存在する (OR books) [書籍]

著者大川 隆法

出版社幸福の科学出版

出版日2014 年 4 月 18 日

商品カテゴリー単行本

ページ数169

ISBN486395459X

仕事はえーな

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