Amazonの電子書籍プラットフォームKindleが日本に参入することが日経にリークされたので、ぼくも遅ればせながら一言。
じつはこのリークより少し前に「某出版社でKindle対応の電子書籍を始めたから云々かんぬん」という話を株式会社破滅派の受託案件で関わった方から聞いていたのですが、確証がなかったので黙ってました。
まず、Kindleが日本にもついに上陸したというのは喜んでいる人と怯えている人がいますね。
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僕がKindleを買ったのはKindle2国際版が出たときなので、ちょうど2年ぐらい前だと思うのですが、買い物自体はほとんどしていませんでした。3G通信費を肩代わりしてくれてすごいなー(実際は書籍代に上乗せなんだけど)とか思ったりするぐらいで、そんなに洋書が読みたいかというとそうでもなかったりするので、青空Kindleで暇つぶしするぐらいにしか使いませんでした。そんなKindleがついに日本でのサービスを開始するということで、感無量です。
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たぶんAmazonの売る努力はハンパじゃない
2年ぐらい前というと、ちょうどiPadの噂が囁かれていたころだったと思います。結局のところ、iPadはPCに置き換わるもので、電子書籍端末だったわけではないというのがわかりました。それはAppStoreのブックカテゴリで一目瞭然です。「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」のパクリ本のようなものがランキング上位を占めている画面を見れば。
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AppStoreの上位が「セックス、雑学、自己啓発」のトリプルコンボで占められている状況は、人類の知的好奇心がその程度のものであるということの証左なのかもしれませんし、Kindleでもどっちみち上位に似たようなものは入ってくるのですが、おそらく違うと思われるのはその売り場整理に対する情熱です。
ぼくはサラリーマンを3年弱しかやりませんでしたが、よその職場に興味があったので、転職エージェントやヘッドハンターに色々聞き回った時期がありました。経歴が特殊だったので、色々教えてもらえたのですね。その中で勧められた一つにAmazonがありました。
Amazonの募集要項は当然英語なんですが、これが読んでみると非常に興味深いのです。直接面接をしたわけではないので、不正確な情報かもも知れないことを承知で書きますが、Amazonという企業はプロダクト(書籍・DVD・家電)ごとに責任者を置いていて、それがピラミッド上になっています。で、その最小単位の責任者(ex. DVD > 日本映画)を年収400万〜600万ぐらいで募集かけるわけです。これが高いか低いかはその責任者のカバーする範囲によると思うのですが、これぐらいの年収だったらまともな人生を送るスタートラインとしては妥当でしょう。お仕事としては、何を仕入れてどれぐらい売るかについて責任を取るということですね。
仮に日本の書店員で人文書の売り場を担当している人がいたとしたら、同じくらいの待遇なのでしょうか。国際ブックフェアで「書店員は家族を養えるような仕事ではない」ということを聞きました。実際ぼくの知人でも、そこそこいい大学を出てそれなりに優秀な人でも書店員をやっている限りはバイトみたいな待遇だと聞きます。Amazonの場合、本質的に似たような仕事(売上があがるように売り場をデザインする)でも、かたや家族を養えず、かたは家族を養えるぐらいの年収はもらえるわけです。
Amazonは出版社に対して値段の注文を入れてくるでしょうし、もしかしたら(というか、多分)この著者に書かせろなど、内容についても交渉してくるはずです。そこはiTunes Conncectでフォームをカチカチやりながら適当に値付けするような世界ではなくて、苛烈な大人の交渉が繰り広げられる交渉の場になるでしょう。
AmazonのDNAは書籍じゃなくて交換
これは以前から思っていことなのですが、Amazonというのはそもそも書籍を売るということからサービスをスタートしましたが、別に本を売りたかったわけではなく、売りやすいものが本だったのではないでしょうか。CEOのジェフ・ベゾスは元々金融屋さんなので、IT成功者としては珍しい「興味のなかった分野で成功した人」です。ジョブズはデザイン好きなんだろーなーとか、ペイジとブリンは検索好きなんだろーなーとか、ザッカーバーグはSNS好きなんだろうなーとか、なんとなくピンと来ますが、ベゾスはぜんぜん本好きそうじゃないですね。ここら辺は楽天の三木谷さんと通じるものがあります。
ベゾスが本質的に興味があるものは「交換」であって、書籍じゃないような気がします。ちょっと疲れてきたので端折りますが、人の経済活動はなんらかの「コト」への対価としてお金を払うことだと仮定します。「レストランでおいしいご飯を食べてお金を払う」のではなく、「レストランで食事をしておいしいと感じたことにお金を払う」と考えるということですね。経済活動で「コト」をお金に変えるのは大変なので、それをある程度具象化する必要があります。「おいしいと思う体験」というコトを「7,200円のフォアグラ乗せパスタ」というモノに一回交換してから提供するわけです。まあ、「サービス」という名目でコトを売りつける場合もありますが、その場合は「サービスの提供者がすごい肩書きを持っている」(ex.弁護士が書類を書く)などのように、具象化することが必要なわけです。
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で、この錬金術というか、コトをモノの方へいかに変換しやすくするかがお金儲けの秘訣だと思うのですが、ベゾスはその点について非常に長けていると思います。だからこそ書籍からeコーマスの先鞭をつけたのではないでしょうか。書籍は実態としてほとんどコト=モノでありながら多くの人がお金と交換していますからね。こうした交換の秘技である錬金術をやらせたらベゾス率いるAmazonに勝てるプレイヤーはそうそういないんじゃないかと思います。
終りに
というわけで、筆が滑って思わぬ抽象的な方向へ行ってしまいましたが、ここら辺でもう寝ます。ほかにもっと書きたいことあったのですが、ビール飲んじゃったので。
いま、Kindleでジョブズの伝記を読んでいるところです。Kindle2でも英和辞書(英辞郎●MOBIのDRMなし版)入れたらけっこう快適に読めてます。Kindle Touchが出たらすぐ買って日本語の本を読みたいですね。