とりたてて好きなわけではなかったけれど、本日(2008/08/05)付の朝日新聞に載っていた解説に思うところがあったので、一言メモ。
ソルジェニーツィンといえば、最後のロシア大作家と評されるように、トルストイの系譜に連なる「重厚長大な大作家」の一人だった。「収容所群島」は彼にとっての「戦争と平和」だったろうし、「全体主義との戦い」という大きなテーマも持っていた。
そういえば、ほとんどの人が「収容所群島」を避けて「イワン・デニーソヴィチの一日」を読んでいるというのも、トルストイに重なる。みんな「戦争と平和」じゃなくて、「イワンのばか」とかを読んでいるでしょ。
ともかく、強制収容所に入れられたという経験は、者を書く人間にとって糧ともなっただろう。それゆえに彼は「大作家」たりえたし、宗教や正義と手を携えた「真っ当な感じ」を帯びていた。
で、以下の一節。
強制収容所体験を持ち、旧ソ連国家保安委員会(KGB)から迫害を受けた同氏〔引用者中:ソルジェニーツィンのこと〕だが、KGB出身のプーチン氏にはその野党への強圧的な政策にもかかわらず、「強制収容所による弾圧に関係したわけではない」とあくまで好意的だった。2008年8月5日『朝日新聞』(全国版)9面
たしかに、収容所体験というものは、微細な悪をかき消してしまうものだ。それに比べたら、今のロシア政権化でジャーナリストの暗殺(アンナ・ポリトフスカヤ)が起きたりするのは、もしかしたらどうでもいいことなのかもしれない。
ある大きな苦しみを乗り越えた社会というものは、微細な修正をして、仕上げて行くことが必要だ。もう革命の時代は終わって、彫刻を研磨剤で磨くようなことが求められている。revolution(革命)よりもelaboration(彫琢)が求められる時代にあって、ソルジェニーツィンの意識は古きよき時代の正義として、なんだか懐かしい。大文字の文学を感じる。そのころはまだ生まれていなかったけど。
価格¥2,380
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著ソルジェニーツィン
翻訳木村 浩
発行ブッキング
発売日2006 年 8 月 3 日