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プライベートな質問を好む人はなぜそうするのか

高橋文樹 高橋文樹

この投稿は 5年半 前に公開されました。いまではもう無効になった内容を含んでいるかもしれないことをご了承ください。

最近、twitterで「Slackなどではダイレクトメッセージを使わない方が集合知!」というのが人気になっておりました。

僕も基本的には同意するのですが、「ダイレクトメッセージを使わない人」がなぜそうするのかも十分にわかるので、その気持ちを勝手に代弁したいと思います。

ぼくはWordPressプラグインをオープンソースでリリースしているのですが、たまにメールなどで質問が来ます。お問い合わせフォームには思いっきり「技術的な質問はパブリックな場でしてね」と書いてあるのですが、それでも質問が来ます。これをコミュニケーションフリーライダー(以下、CFR)と呼びましょう。

プラグインの使用法などの技術的な質問はWordPress.orgの日本語フォーラムやこのサイトのコメント欄、Twitterへのリプライなど、パブリックな場所で行ってください。その方が他の人のためにもなります。

こうしたCFRは「受託事業で使っている」という人が多いです。確かに、プライベートに質問する十分なモチベーションがあります。

  • 自分が他人に質問しなければならない(=その問題を解決する知見を持たない)ことを顧客に知られたくない。
  • 関係をとにかく1vs1 にしたい(=自分が1vsNの不特定多数になることをよしとしない)
  • 情報ゲームにおいて優位に立つためにとにかく自分の情報を秘匿したい。

だいたいこんなところですかね。CFRの中には自分をよく見せる力(ブランディング)に長けている人が少なくない印象です。「あ、あいつ俺にあんなくだらない質問してたくせに本出してる!」みたいな。

3番目の「情報ゲームにおいて優位に立つためにとにかく自分の情報を秘匿したい」がちょっとわかりづらいので補足しときます。

たとえば、すべての人間が相手をだしぬくレースのようなものをしている(=万人による闘争状態)と仮定すると、「自分がすべてを知っていて相手が何も知らない」という状況はとても有利ですよね。CFRはそういう状況になるべく生きているんだと思います。集合知の有用性が知られるようになってきた現代でもこういう人はいて、たぶん縄文時代からずっといたのでしょう。

たぶん元ツイートの方がいっている「登壇発表のQAタイムで質問せずに、発表終了後にコソコソ登壇者に聞くのと一緒。良くない。」という指摘は、講演とかの質問タイムで手を上げずに名刺交換で長蛇の列を作ってこっそり質問する奴は泥棒と一緒、というちょっと前に話題になった記事を念頭に置いているのでしょう。

サービス提供者としての考え方

で、サービス提供者(e.g. Slack)の立場になって考えてみると、CFRが一定数顧客のグループ内に存在すること自体はどうしようもないですよね。そこにニーズがあるなら、有料サービスとするだけですし。いまもゲストプライベートチャンネルは有料ですよね。

僕もプラグインへの質問は実験的に有料プランを作っています。GianismというプラグインにはGianism Premiumという有料プランがあって、それを買うとコードの質問に答えます。たまにいるんですよ、長大なコードを送りつけてきて「どこが間違ってますか?」と聞いてくるCFRが。

これ自体はビジネス的に大きな額にならないのですが、有料プランを用意しておくことで「その質問は有料です」とばっさり切ることができて便利です。

組織の長としての考え方

さて、上記のケースではビジネス的に収益化することで「ピンチはチャンス」みたいな考え方ができるのですが、組織の長だとそれとは別に「DMが多いと組織が腐る」という別の判断基準があると思います。

では、果たして「DMを送るような輩がいると組織が腐るのか?」という問いに関してはいくつか考えるべき点があります。

  • CFRの与えるダイレクトメッセージによる悪影響はいかほどか?
  • CFRのビジネスにおけるインパクトはそれよりも小さいか?
  • ダイレクトメッセージがあることによるメリットは何か?
  • ダイレクトメッセージがなくなったことにより別のコミュニケーションチャンネル(e.g. 飲み会、喫煙所)が強化されないか?

これらを鑑みると、いろいろアイデアが浮かぶんじゃないでしょうか。そうですね、SlackはAPIがあるのでたとえば……

  • DMを送るとそれが公開チャンネルにコピーされてしまう(事実上の廃止)
  • DMを送るとマイナスポイントが溜まっていき、人事考課に影響が出る。社内Wikiやブログを書くとプラスポイント。

などをやってみると、組織作りも捗るんじゃないでしょうか。


なお、僕は組織内のコミュニケーションがパブリックな場で行われることをよしとするタイプの人間ですが、CFRの嫌らしい性格がビジネスの現場では役立つことがけっこうあるなと感じています。受託案件でデカい企業の仕事をとってくるときとか。

思い返すと、自分の恋愛事情はいっさい話さないのに人の恋愛事情はいろいろ聞き出して自分だけちゃっかり色んな子と付き合ってるヤツ、いましたよね。おわり。

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