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安藤忠雄メソッドという概念について

高橋文樹 高橋文樹

この投稿は 7年 前に公開されました。いまではもう無効になった内容を含んでいるかもしれないことをご了承ください。

最近、「5.000兆円とは言わない、2億円ほしい」ということをよく言っているのですが、そうすると、近くにいるうさんくさいおじさんたちが「高橋さんならすぐ稼げるよ!」ということを言ってきます。「VALUっていうサービスがあってね?」とかね。誰がやるか、バーカ。

さて、タイトルに掲げた通り、僕はある一定の技術なり才能なりをもった個人がその力を金に変えようとするときに直面する難しさについて説明するとき、安藤忠雄メソッドという言葉を使っています。これは非常に有用な知見なので、みなさんにシェアさせていただきます。

安藤忠雄メソッドとは

安藤忠雄という人は、みなさんもご存知の通り、日本を代表する建築家であります。こういうことを言うと、建築好きとか広告代理店の人とかが「安藤忠雄っていうのは〜」というウンチクを垂れてくる可能性があるのですが、それらはあらかじめ黙殺します。安藤忠雄は日本を代表するトップクラスの建築家です。

で、安藤忠雄のような才能を持った個人がビジネスを展開していく際、まず考えられるのは、「そのブランドを使って商売していくこと」です。安藤忠雄事務所に建築を依頼すると、安藤忠男クオリティの建築物ができると考えるのは人の性。

しかし、安藤忠雄がすべての仕事をやっていると、最大でも24時間×365日しか働けません。時給が65,535円だとすると、となると、最大でも4億しか稼げません。これは一般ピープルとしては多いかもしれませんが、日本を代表する建築家としては「えっ、それだけ?」となってしまいます。あと、なんというか、それだったら自分で借金をしてその建築物を立てて売った方が儲かる程度の額になってしまいます。

そこで取るべき戦略を2つにわけると、「単価を上げる」「販売数を増やす」という2つの戦略が考えられます。

単価を上げる

単価をあげることはできなくもないのですが、さらなるブランディングが必要になります。はたして、日本で最高の建築家になったあとで、どんなブランディングが可能なのでしょうか?

また、単価を上げると顧客が減るという観点も忘れてはいけません。

販売数を増やす

販売数を増やすためにもっとも簡単な方法は「人を増やす」です。要は、安藤忠雄は安藤忠雄のコピーを作ればいいのです。しかし、それがそんな簡単かというと、日本で最高の建築家にまで上り詰めた人間のコピーを作ることは簡単ではありません。

ではどうしたらいいのでしょうか?

ブランドの創設

さて、どちらの道にもそれぞれの難しさがあるので、ブランディングを展開します。

まず、安藤忠雄事務所を構え、人を雇います。もちろん、昨日まで建築をやっていなかったとか、そういうレベルの人を雇うことはできませんが、早稲田の建築科を出たけれども大成建設で不本意ながら現場監督をやっていた第二新卒とか、ポテンシャルのある人材を雇い、トレーニングをします。

その後、彼がある程度の経験を積んだら、安藤忠雄は彼を「我が事務所のエース」として顧客に紹介します。もしかしたら、「自分にはない若いセンスを持ってる」ぐらいいうかもしれません。それで、時給65,535円を請求します。実際に彼の時給は3,000円なので、安藤忠雄事務所には62,535円が残ります。

社員が一人なら、こんなことをしているとリスクにしかならないでしょう。しかし、社員が10人いたらどうでしょうか? 彼らが辞めてしまったり、顧客をかっぱいでしまったり、ブランドを毀損して時給6,500円にしてしまうかもしれないリスクを負ったとしても、手元には以前より多くの売り上げが残ります。

というわけで、安藤忠雄メソッドについて説明させていただきました。

小説家やミュージシャン、映画監督のように複製物が再現なく売れる可能性があるビジネスモデルだと個人の才能で売り上げを伸ばし続けることは可能なのですが、そうでない場合(または、そうであったとしても)、ブランディングという手法をとることによって、全体的な売り上げを増やすことは可能です。

問題となるのは、そのブランディングが顧客をだましていないかということですよね。事業として展開すると、当然間接費などがたくさん乗っかってくるわけですが、そこをクライアントが納得してるかどうかというのは非常に重要です。

というわけで、終わります。僕は安藤忠雄個人がこういうことを考えてビジネスをしているかどうかはまったくしらないので、もしかしたら「こいつは安藤先生に喧嘩売ってる?」という反応を招いてしまうかもしれません。その際はどうぞご寛恕いただければ幸いです。

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発行日経BP 日本経済新聞出版本部

発売日2012 年 3 月 1 日

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