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2017 年 4 月 8 日 217日前)
3,672文字 (読了時間9分)

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僕は日々めんどうな受託業務、ほとんど金にならない破滅派の開発、3人の幼子の世話、犬の散歩、小説の執筆などにかまけているのですが、夜は3人の育児にてんてこまいの日々を送っている妻とコミュニケーションをとるようにしています。これを僕は「のんちゃんタイム」と呼んでいます。

で、昨日はシリアへの空爆があったわけですが、昨晩、妻は「ありがとうって思った」と言ったわけです。妻はいわゆる四大卒(多摩美)で、ゲンビに展示があるような芸術家の友達が何人もおり、新聞社勤務の父と専業主婦の間に生まれ育ち(なお、世田谷区民)、僕の生まれ故郷である千葉を時折Disり、桐野夏生や鈴木いづみや北欧ミステリーを愛読し、アメリカ大統領選ではヒラリーに勝ってほしいと思っていた中産マニュアル階層のインテリ女性なわけです。で、彼女がなぜ「ありがとう」と思ったかと言うと……

  • トランプは女性蔑視だし野蛮だから嫌い
  • でも、後藤さんの死などを見て、シリアの情勢は誰かがなんとかすべきだと思った
  • 国連のような団体がなんとかしてくれればいいのに、何もしないから苛立っていた
  • そこでトランプが空爆をした
  • 「ありがとう」と思ってしまった
  • これってやばいよね ← New!

実のところ、ぼくはこうした経緯を経てなお「トランプがやばい」とはあまり思っていませんでした。ここに夫婦間の断絶があったわけですね。これは僕が超自我だけで生きている人間だからなのですが、そもそも現在の世界情勢としては……

  • 中国やロシアの進展・西側諸国(アメリカ・欧州)の相対的地位の低下などにより、トランプ当選やBREXIT、オキュパイ運動などが起きた。
  • こうした情勢は「エスタブリッシュメントへの反逆」という側面がある。
  • しかし、それを衆愚と呼ぶことは正しいのだろうか?
  • ダニエル・コーエンのような経済学者は「人類の進歩を支えているのは人口の増加である」と言っている。ということは、馬鹿どもが権利を主張し、インテリ様の地位を脅かすほど成長したということは、世界にとって喜ばしいことなのでは? ジャレド・ダイアモンドなどは彼より頭の悪い大半のインテリが原発反対なのにもかかわらず原発賛成派であり、それはなぜかというと、彼の博覧強記をもってすれば、人類喫緊の課題はエネルギー資源の枯渇であり、その危機と比べればチェルノブイリや福島のような危機は取るに足らないものであるわけだ。60億のうち200万人ぐらい死んでもしょうがないじゃん、という知見を持っている。
  • その他、ピケティのような経済学者も、「人類の格差が拡大したピークが19世紀末」「いまはその水準に近づきつつある」というような危機を主張しているが、翻ってみれば、経済成長を享受するということ自体が人類史的には稀であり、成長のない群雄割拠の戦国時代が人類のデフォなのではないだろうか。
  • そうした状況において、馬鹿で粗野なトランプが独自の決断主義(©︎宇野常寛)によって米中会談の直後にいきなり空爆を開始したのはわりと効果的なのではないか。
  • ロシア=シリアや中国=北朝鮮などのような「やんちゃな関係」は西側諸国の宥和政策によって看過されていただけであり、それはなぜかというと、西側諸国にとって東側諸国が取るに足らない存在だったからである。その力が均衡すれば、なにも宥和する必要はない。これは僕がいま息子に顔面を殴られても笑っているが、中学生になった息子に顔面を殴られたら思いっきり殴り返すのと同じだ。
  • 今回の空爆により、シリア情勢が安定化に向かったとする。となると、トランプは正しかったことになる。オバマが「弱腰」と評されながらも多くのインテリに支持をされたのと比べ、トランプは馬鹿にされながらも正しい結果をもたらしたというわけだ。トランプに熱狂したテキサスのレッドネックの方が、twitterで喚いていたハリウッドのセレブよりも正しかったことになる。トランプの女性蔑視を問題視していたインテリ女性たちは、空爆によってシリア情勢が安定化したとしたら、レイプや殺害の心配が減った少女たちがトランプに感謝するのを見て、何を思うのだろうか。
  • こうしたことを言うと、「英雄主義だ!」と批判する者が現れる。トランプはいつか、ヒットラーになるだろう。歴史は繰り返す、一度目は悲劇として、二度目は喜劇として。ほら言っただろう、というわけだ。で、僕はそれに対してこう答える。「喜劇ならいいじゃん、少なくとも面白いんでしょ?」アレクサンドル・コジェーブ的なヘーゲル史観はもはや無効だ。文明の衝突? それが騒ぐほどのことだろうか。歴史は完成していないし、文明はずっと衝突してきた。

とまあ、僕はこんなことを思うわけですが、やはりトランプはゲスだと思います。でも、これほど人口が増えたいま、ちょっとそっとのインテリ(四大卒)が自分の地位を守ろうとするのは虫が良すぎるとも思うんですよ。これは僕が氷河期世代だからという個別具体的な視点もあるので、話半分に聞いて欲しいのですが。

なんというか、最近わりと感じている「エスタブリッシュメントの集まり」みたいなものが僕は本当にクソだと思っていて、たとえば僕は東大を出ているので、WordPressやらePubやらの集まりで早慶出のやつに「そんなこと言ったって、みんな高橋さんほど頭良くないんですよ、東大出は違うな」と言われたりするんですが、そんなもんお前、人類規模で見たら大して変わらないぞ、と心底見下してます。おまえも上位1%だから! 「東大出は違うな」なんて言ってるおまえ、俺は北千住にあるタクシー運転手向けの朝五時からやってる居酒屋でなぜか連れ(中卒)が「彼、東大出てる小説家なんですよ」とか言い出したせいで、ホスト(女連れ)に死ぬほど絡まれてんだぞ? そういうことを言うお前のことは「殺すぞ」って思ってます。差異化おつ。高橋源一郎がひらがなで「ぼくはてんのうの」とか書いているのを見たときぐらい見下してます。

そうだ! 思い出した! 高橋源一郎! おまえ、灘高入っといてなにバカの味方のふりしてんだ。『さようなら、ギャングたち』も『優雅で感傷的な日本野球』も『すばらしい日本の戦争』も、『さようならコロンバス』と『素晴らしいアメリカ野球』のパクリだって俺は知ってるぞ。なにが失語症だ、病人のふりをするのはやめろ。隠すなよ、誰も笑わない。ちゃんとインテリの端くれとして、馬鹿どもがあげる声に真摯に向き合おうよ。ちなみに、『素晴らしいアメリカ野球』の原題は “The Great American Novel” つまり『偉大なるアメリカ小説』です。さすがフィリップ・ロス、やるよね。

閑話休題。僕の周りにはエグザイルを馬鹿にしているサブカルがほんとうにたくさんいて、その人たちはみんな口を揃えて「いいものを作っているんだけど、金がない」とのたまいます。でも僕はぐっと堪えるんですよ。「LDHの売り上げ超えてから言おうぜ!」って言葉を。「おまえらインテリなんだろ? だったら勝とうよ」って。

こうした「馬鹿だけど結果にコミットする」という力を、僕は「エグザイル力(りょく)」と呼んでいます。見習いたいですね。

で、こういうことを言うと、必ず来る反論としては「では、その結果としてあなたの子供が戦争で死んだらとう思いますか?」という残酷な質問が来るのですが、そんなもん、戦争の原因になった奴を殺したいと思うに決まってるじゃないですか。僕はこういう質問をする人がほんとうに卑怯だなと思います。そんなもん、北千住でホストに死ぬほど絡まれてから言えや。キリストの「誰も私を試してはならない」という言葉を思い出してください。試すな。おまえがやれ。

それでは、そろそろ子供が夜泣きする時間帯なので、寝ますね。おやすみなさい。

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クリエーター山形浩生, 守岡桜, 森本正史

発行みすず書房

発売日2014 年 12 月 6 日

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作者フィリップ ロス

クリエーターPhilip Roth, 中野 好夫, 常盤 新平

発行新潮社

発売日2016 年 4 月 28 日

カテゴリー文庫

ページ数697

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