スマートフォンの誕生以降、パソコンは持ち歩けるものになり、いまはGoogleグラスのような「よりウェアラブルなもの」とGoogleカーのような「パソコンの力を手にした機械」という2つの大きな勢力が人々の期待を集めていますが、僕個人としては、人類に多大なる影響をもたらすネクストステップは「ヒューマン-コンピュータ・インターフェース」なのではないかということをずっと考えています。
さて、最近はGoogleがChromecastというものを発売しましたが、僕はというと、ひと月ほど前にApple TVを買ってその使い道のなさに絶望していたところでした。
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Huluとか碌なコンテンツないし、Youtubeの入り口はWebだし(AppleTVのYouTube起動して面白い動画探す気になれない)、色々考えた挙げ句、「Apple TVはAirplay専用機だったのだ」という結論にいたりました。最近のキュレーションメディアが紹介している動画は短い物ばかりなので、がっつり見られる動画サイトないかなーと探したところ、NHKオンデマンドに落ち着きました。
で、2005年だかの番組で立花隆がサイボーグ研究の最先端を取り上げた番組があったので、それをまた見ようかなと見たわけです。それが『NHKスペシャル 立花隆 最前線報告 サイボーグ技術が人類を変える』であります。
この番組では、障害や病気を抱える人に対して施されたサイボーグ医療が中心的に取り上げられます。色々あるのですが、かいつまんで紹介します。
1. 脳とカメラをつなぎ、見えるようになった盲人
カナダのジェンス・ナウマンという人は、22歳のときに事故で全盲となったのですが、ドーベルアイという手術を受けて、カメラを脳に接続した状態でものが見えるようになります。
「見える」といっても、「木が動くのはわかるが、建築物が見えるわけではない」という感じで、モザイク状のドットが見えているだけらしいのですが、それでも暗闇の中に指す光子は大いなる喜びをもたらしたそうです。
このナウマンさん、カメラをつなぐとともに、大きなコンピュータを担ぎます。バッテリーやらなんやらで色々と重くなったのでしょう。手術(費用1,200万)したのは2002年以前らしいので、コンピュータの進化の歴史を考えるとそんなもんかなという気がします。
で、面白いのはこの番組の時点で「機械が古くなり、はじめは100個ほどあったドットがいまでは6個しかない」ということです。このとき、一緒に見ていた嫁さんと「なんでメンテナンスしないんだろうね」という話をしたのですが、調べてみたところ、開発者のドーベルさんは亡くなってしまい、研究所は閉鎖、メンテナンスが不可能になったので、2006年にはすでに装置を除去せざるを得なくなっていたとのことです(参考:ドーベルアイ・人工視覚)。ヤマダ電機の電子書籍が読めなくなったどころの騒ぎではないですね。
いまであれば、「コンピュータはもっと軽量化できる」「非接触技術で脳に電極刺さなくてもよくなる、そうすればメンテナビリティ高い」とか色々と改善できることもあるでしょうが、ドーベルという天才が死んでしまうと、一気に停滞してしまうんですかね。
ちなみに、この「脳に電極を刺す」というイメージは当時の僕に大変影響を与えました。もちろん、『マトリックス』とか、それに先行する『攻殻機動隊』とか、そういうものを知らなかったわけではないのですが、それらよりもずっと早くから脳に物理的インターフェースをつけるということをやっていた人を知って衝撃を受けたわけです。このアイデアは幾つかの小説に反映されていて、たとえばこちらに寄稿した小説がそれです。
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2. 感覚の偽造
視覚だけでなく、たとえば触覚とかも作れるようになっています。番組では精巧な義手(五本の指が別々に動き、触覚を持つ義手)の例が紹介されるのですが、この義手を研究した成果として、触覚をエミュレートする場面が映されます。立花隆が腕に電極を刺し、その先にはロボットの義手がつながれています。で、そのロボットの指先を押すと、立花隆が自分の指を触られたような気持ちになって「おおっ」とか叫ぶんですよ。
で、僕の記憶では、このとき立花隆が「僕はいままで人間は言葉だと思っていた。でも、実際にああした感覚を味わってみると、もしかしたらそうではないのかと感じた」ということを言っていました。が、見直してみたらそんなこと言っていなかったですね……
3. 進化したロボトミー
『カッコーの巣の上で』という映画では、精神病棟での最終措置としてのロボトミーが描かれています。ネタバレを書いてしまうと……
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こうした、「脳をいじることによる人間性の喪失」というのは常につきまとうテーマなのですが、この番組では脳に電極を埋め込むことで人間性を回復する人が登場します。この人はジストニアという病気で、身体の一部が不随意で(=意志とは関係なしに)動いてしまいます。
この人は一見普通になのですが、それは脳深部刺激療法というものを受けたためで、左右の胸にリモコンが埋め込まれ、それが脳内に電気信号を送り、症状を抑制しているのです。
印象的なのは、この人が自ら機械の動きを止める場面です。右胸と左胸にリモコンをあて、ピッという音を鳴らしながら電源を切ります。すると、その人の右頬がすぐに垂れ下がり、手や足が震え出します。はじめは自分に表れる症状を冷静に説明するのですが(ほら、足が震えてきました)、徐々に深刻な表情になってきて、「もうすぐ私はしゃべることもできなくなります」と告げます。呂律が回らなくなってきたあたりで、心配した番組スタッフが「電源を入れた方がいいのではないですか」と尋ねます。すると、この人は緩慢な動きでリモコンを胸にあて、ピッと鳴らします。すると、見る見るうちに元に戻り、軽やかにステップを刻んでさえみせます。その横で、奥さんが ”This technology is awesome.” と言います。
というわけで、色々と紹介してみましたが、他にもたくさん見所はありますので、オススメです。しかも、これが9年前の番組だということに驚きを覚えますね。ある試みは天才の死によって頓挫し、ある試みはよりブラッシュアップされて現在も続いているわけです。
わかり合いたいという欲望
最初に言及した「ヒューマン-コンピュータインターフェース」に戻りますと、もし人類が劇的な変化を遂げるとしたら、メガネを持ち歩いたりするという次元ではなく、自身にコンピュータをつないだときだと思うんですよね。
もちろん、デザイナーズチルドレンなどのような生物学的アプローチもあるわけで、必ずしも脳にコンピュータ直結するのかというと、未来はもっと違った形で「人間の拡張」を試みると思うのですが。
個人的に興味があるのは、それによってもたらされる思考の変容です。『寄生獣』という漫画では、こんなラストを迎えます。
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こうした「他者との合一」というのは、僕にとっても魅力的なアイデアに思えます。自他の考えが違うという、コミュニケーション上の齟齬によって多くの幸不幸が生み出されています。そうした世界において、ヒューマン-コンピュータ・インターフェースはなにか新しい回答を導き出してくれるのではないかな。
そうそう、最後になりましたが、NHKはやっぱり凄いですね。