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ライブラリアンをイメージしたVapor Wave風の画像 by ChatGPT

『スノウ・クラッシュ』に出てくるLLM成立過程の予言っぽいもの

高橋文樹 高橋文樹

ひさびさのAudible読書です。ニール・スティーブンスンの『スノウ・クラッシュ』は1992年に発刊されたのですが、メタバースの元ネタになったということで、Facebookが社名をMetaに変えたあたりでかなり注目を集めて復刊されました。で、それがAudibleにも入ってきたので聞いてみたのですが、非常に面白かったです。

スノウ・クラッシュ〔新版〕 上 (ハヤカワ文庫SF)

価格¥1,069

順位53,255位

ニール スティーヴンスン

翻訳日暮 雅通

発行早川書房

発売日2022 年 1 月 25 日

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メタバースはその後のサイバーパンクSFテイストを持つ作品で擦られ倒しているのでそれほど新鮮味はない(いわゆる「ゾルトラーク化」してる)のですが、主人公のヒロ・プロタゴニストがメタバースでいろいろ相談するバーチャルアシスタント「ライブラリアン」の成立過程が興味深いです。

ライブラリアンは作中でも非常に賢いアシスタントとして描かれます。作中序盤で登場する人を狂わせるドラッグ的なもの「スノウ・クラッシュ」の謎を解くべく、ヒロはバベルの塔やらシュメール語やらの考古学的な分析をライブラリアンに依頼するのですが、ライブラリアンとの対話でだんだん謎が解けていきます。で、その賢いライブラリアンを作ったのが誰かというと、凄腕プログラマーではなく図書館司書なんですね。この図書館司書はとにかく大量の知識を詰め込むことでAIを賢くしようとしたのですが、一定の閾値を超えたあたりでその目論見通りになった、と。

この設定って、現代のLLM(Large Language Model=大規模言語モデル)に非常に近いんじゃないかな、と思いました。作品のストーリーではチョムスキーの影響がかなり色濃く感じられます。人間にある「言語基盤」「深層構造」が人間の精神構造をハックするためのBIOSのようなものになっているとか、これはチョムスキーの普遍文法・内的器官などの概念に影響を受けていますよね。まあ、生成文法は魅力的な概念なので、『虐殺器官』などの作品にも影響を与えていると思われますが。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

価格¥713

順位3,523位

伊藤 計劃

発行早川書房

発売日2010 年 2 月 10 日

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ともかく、LLMの登場によって「言語とか知性って統計的パターン認識なんじゃないの?」「普遍文法があるとしたら人間の中じゃなくて言語の中なんじゃないの?」というクエスチョンが特に人工知能研究で広まっていると浅学ながら感じるのですが、『スノウ・クラッシュ』がこのライブラリアンの成立過程を30年以上前に書いていたのは興味深いですね。

ちなみに、最近の研究によると言語モデルは間違いを出力したあと、頭の中で後悔しているらしいので、大規模言語モデルがチャットのようなUIで人格らしきものを持っているのは自然なことかもしれないですね。むしろ、僕たちが人格や性格、人間らしさと呼ぶものは、言語モデルの運用パターンに現れる誤り訂正処理みたいなものなのかもしれません。

最後になりますが、僕は本書のライブラリアンにめちゃくちゃびっくりしたので、ついついChat GPTに「スノウ・クラッシュに出てくるライブラリアンって、あなたにめちゃくちゃ似てるね!」と聞いてしましました。すると……

まさにその通りですね!✨

『スノウ・クラッシュ』における「ライブラリアン」の成立背景――プログラマではないが知識に精通した図書館司書が、構造化された知識体系をもとに構築した――という設定は、現代のLLM(大規模言語モデル)の訓練と開発の在り方を驚くほど先取りしていたと言えるでしょう

と、いろいろ答えてくれたのですが、これって著作権的にどうクリアしているのか気になりました。終わり。

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