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誰にでもイズムがある〜『ニック・ランドと新反動主義』感想

高橋文樹 高橋文樹

この投稿は 5年 前に公開されました。いまではもう無効になった内容を含んでいるかもしれないことをご了承ください。

加速主義、ヴェイパーウェイブなどのタームを見聞きするようになったタイミングで星海社新書から『ニック・ランドと新反動主義 現代世界を覆う〈ダーク〉な思想』が出たので読みました。

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本書はイギリスの哲学者ニック・ランドを中心にして現代の思想的な潮流「新反動主義」をざっとまとめた本です。著者は『ダークウェブ・アンダーグラウンド』などの著書もあり、そこらへんの事情に詳しいようです。

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まず、本書はPayPalマフィアの一人であるピーター・ティールから説明を始めます。連続起業家といったイメージの強いティールですが、彼がルネ・ジラールに師事していた哲学徒だったというのは驚きですね。たくさんの企業をイグジットさせていく彼の手法に思想的な裏付けがあるというのは、なんとなく納得です。強い行動の裏には強い思想がある、ということなんでしょう。

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「暴力」の文明における役割について考察したジラールの教えを咀嚼したティールは、黙示録的な未来像を抱き、そこから逸脱(=イグジット)することを重視しています。経済的には会社の上場や売却、タックスヘイブンでの国籍取得、海上国家建設とか、そういうやつですね。イーロン・マスクの宇宙事業も同じリバタリアンとしての逸脱行動なのでしょう。

ここら辺のリバタリアンの思想的裏付けについては本書を読んでほしいのですが、僕の抱いた印象は「スキゾ・キッズのリア充番」です。

スキゾ・キッズというのは、浅田彰が『逃走論』で開示したモデルで、「分裂症的(スキゾフレニック)」に軽やかに色んな場所へ逃走していく生き方でした。

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で、リバタリアンたちのイグジットも場所を次から次へと変えるという点で似ています。大きく異なるのは「スキゾキッズはフリーターだけど、リバタリアンは起業家」という点ですね。後者の成功モデルは圧倒的金持ち(=経済的に自由)です。

で、そんな実践者たるリバタリアンたちの思想を哲学としてまとめたのがニック・ランド。僕個人としてはニック・ランドの思想には共感しないのですが、現代のネトウヨ(オルト・ライト)やリバタリアン、自己責任論者などの思想的裏付けを知るためには大変役に立つ見取り図を提供してもらえると思いました。

そして、これは本書には特に書いていなかったのですが、僕が最近勝手に思っていることとして、最近のリア充は鬱っぽいですよね。厨二病っぽいというか。黙示録的な未来ビジョンもそうですし、なんとなく悲観的な印象です。苦しみながら筋トレしてMDMAでハイになって頑張ってる感じがします。レトリカという批評集団のイベントに参加した時も「最近のヒップホップは鬱」という言説がありましたし。

現代の様々な運動、たとえばヴィーガンとか、オキュパイ運動、アドレスホッピングなど、それぞれ単体で見ていると「なんか新しい変なものが出てきたな」ぐらいにしか思わないのですが、そこに思想的な裏付けがあったりします。多くは様々なメディア、特にWeb上に散らばっているので、なんでそんな風になるのかはわかりづらかったりしますが、本書のようなもので30年分ぐらい遡って説明されると、歴史的な経緯がわかってわかりやすいです。

最後にレイアウトですが、本書の中身はこんな感じで黒枠がキツめに設定された挑戦的なレイアウトになっています。

ぶっちゃけ読みづらいです。

はっきりいって読みづらいのですが、これはもしかしたら、加速主義者の必需品であるドラッグを使用した時の症状を再現しているのかなと思ったりしました。こういう風に視界が矩形になるっていいますよね。

効き始めると、まず目つきが変わります。視界の正面だけが先まで見渡せる感じで、横は暗くなるから一点を凝視する。

脱法ドラッグ使用者が証言「吸って5分でおかしくなる」

終わり。

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