いまさら断捨離とかいいはじめて恐縮なんですが、先日Amazonさんに薦められるまま、『知の欺瞞 ポストモダン思想における科学の乱用』という本を読みました。
「知」の欺瞞――ポストモダン思想における科学の濫用 (岩波現代文庫)
価格¥1,848
順位95,054位
著アラン・ソーカル, ジャン・ブリクモン
翻訳田崎 晴明, 大野 克嗣, 堀 茂樹
発行岩波書店
発売日2012 年 2 月 17 日
大学生ぐらいの頃に翻訳が出ていたので「ソーカル事件」とそれについての本の存在自体は知っていましたが、岩波現代文庫にお手頃価格で入っていたのでいまさらながらポチってみた次第です。
ソーカル事件(ソーカルじけん)とは、ニューヨーク大学物理学教授だったアラン・ソーカル(Alan Sokal、1955年-)[1]が起こした事件。数学・科学用語を権威付けとしてでたらめに使用した人文評論家を批判するために、同じように、科学用語と数式をちりばめた無意味な内容の疑似哲学論文を作成し、これを著名な評論誌に送ったところ、雑誌の編集者のチェックを経て掲載されたできごとを指す。掲載と同時にでたらめな疑似論文であったことを発表し、フランス現代思想系の人文批評への批判の一翼となった。
Wikipedia – ソーカル事件
わざわざ論文の査読を突破するあたり、いたずら心と批評精神に満ちた行為で僕なんかは共感を覚えますね。
で、この本ではラカン、クリテヴァ、ボードリヤール、ドゥルーズといった人文系学者が批判されています。骨子としては「あんたたち難しい科学用語を使っているけど、そもそも使い方間違ってるし読者を煙に巻くようなことはやめなさい」というものです。
この本を読み終えて一番良かったのは、10年に渡り積ん読のままだった『エクリⅠ・Ⅱ』を読まなくてもいいかなという気分にさせてもらえたことですかね。
価格¥6,985
順位184,458位
著ジャック・ラカン
翻訳宮本 忠雄, 竹内 迪也, 高橋 徹, ほか
発行弘文堂
発売日1972 年 5 月 25 日
ポストモダンというか、ポスト構造主義の哲学書/思想書というのは、読んだことのある人ならわかると思いますが、「何を言っているのかわからない」というケースが多々あります。それも「単にある一文の意味が取れない」というのではなく、「そもそも何が問題になっているのかわからない」という一番ヤバい状態ですね。
大学生の頃はまだウブだったので、一生懸命カントールの対角線論法とかを勉強したりしたものですが、次はゲーデルの不完全性定理、次はフラクタル理論といった具合に次から次へと出てくるので正直辛いなと感じてました。こうした難しい原著はとりあえず本棚に飾っておいて講談社の『現代思想の冒険者たち』シリーズあたりでお茶を濁すというのがデキる文系の処世術なわけですが、それもなんかもやっとしますしね。
というわけで、ポストモダン思想書が本棚に沢山積ん読されている方は、この『知の欺瞞』を読んでみてください。もう読まなくていいんじゃないかという気持ちになれること請け合いです。ポストモダンの亡霊を断捨離して、気持ちよい新年のスタートを切りましょう。
ただし、実際に本は捨てない方がいいと思います。ドゥルーズとかが本棚に並んでいるとかっこいいからです。