最近流行りのSFプロトタイピングですが、その実践とノウハウが詰まった本『SF思考 ビジネスと自分の未来を考えるスキル』が7月27日に発売されます。僕もこのプロジェクトに参加し、短編「海の感情」を執筆しました。本書に掲載されていますので、ぜひお求め下さい。
価格¥1,650
順位27,354位
著藤本敦也(編著), 宮本道人(編著), 関根秀真(編著)
発行ダイヤモンド社
発売日2021 年 7 月 28 日
本書の見所
この『SF思考』は科幻作家宮本同人さんと三菱総合研究所藤本敦也さん、関根秀真さんの共著となっていますが、基本的には2020年に行われた三菱総研50周年記念研究の一環として行われたワークショップが元となっています。これには僕を含めて柴田勝家、林譲治、長谷敏司、松崎有理といったSF作家が参加して、実際にSF小説を執筆しました。
宮本さんは筑波大学の大澤さんとともにSFプロトタイピングを日本に持ち込んだ第一人者でもあるので、ワークショップ全体の構成も非常にこなれていて、戸惑うところは少なかったです。三菱総研さんも50周年記念研究の成果をもとに未来をかなり細かくシミュレーションしていたので、相談相手がいたのも楽でした。
この本の面白いところは、ターゲットがおそらく「SFプロトタイピングが気になっているビジネスマン」に向けた者なので、実際に企業などの団体の一員としてSFプロトタイピングを実践するにはどうしたらいいかが具体的に掲載されている点です。たとえば……
- SF作家と出会うにはどこにオファーしたらよいか?
- どのようにプロジェクトを立案したらよいか?
- ステークホルダーを説得するには?
などのサラリーマンが興味を持ちそうなポイントが列挙されています。
余談なのですが、藤本さんは大学時代僕と同い年だったそうで、共通の話題が多かったですね。「ユーグレナの出雲って同じクラスでしたよ」「あ、私は同じサークルでした」といった感じで。
作家にとってSFプロトタイピングとは?
さて、最近のSF作家ではSFプロトタイピングに関わったことがある人も多く、ある意味で発注者側からするとやりやすいんじゃないでしょうか。「企業案件」という隠語も作家の間では誕生しています。お金も払われるので、金銭面的にはそんなにめんどくさいことはないような気がします。
ただ、SFプロトタイピングの仕事は世に出ないことも多いようなので、今回の三菱総研のワークショップがこうして世に出たことは僕にとっても嬉しかったですね。「最近見ないなあいつ」と思われた作家としては致命的ですからね。
また、SFプロトタイピングだと行政や企業が主体となるので、過激な表現、ネガティブな表現は禁止されることが多いです。ここら辺を器用に変えられる作家の方が向いているのかな? 僕はあんまり気にしないですが、「どうしても作品内で人が10人ぐらい死なないとダメだ!」というこだわりを持っている作家もいるかもしれませんので、そういう作家にとってはけっこう大変な仕事になるかも。
他のSFプロトタイピング本
SFプロトタイピング界隈では大澤さん・宮本さんの筑波大学コンビと樋口京介さんが有名です。
というわけで、SFプロトタイピングを導入してみたいとお考えの人はぜひここら辺の本を読んでみてください。おわり。