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2012 年 8 月 7 日 1,690日前)
2,431文字 (読了時間6分)

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バンクシーというゲリラアーティスト(そういう呼び方あるかは不明)がいるのですが、彼の手がけた映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』を見ました。2年前にアカデミー長編ドキュメンタリー賞にノミネートされていたらしいのですが、偶然DVDで借りてきて見ました。

イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ [DVD]

イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ [DVD] [DVD]

価格¥ 5,184

監督バンクシー

出演者ティエリー・グエッタ a.k.a. ミスター・ブレインウォッシュ, スペース・インベーダー, シェパード・フェアリー, ゼウス, バンクシー

出版社角川書店

出版日2012 年 2 月 2 日

商品カテゴリーDVD

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映画のあらすじ(含ネタバレ)

  1. ティエリというフランス系アメリカ人は古着屋の店主をやっていた。趣味はビデオを撮ることで、生活のあらゆるシーンを撮影し続けた。
  2. ある日、いとこのグラフィティアーティストについていって、一部始終を撮影する。そのスリル溢れる活動を気に入ったティエリは、ありとあらゆるグラフィティアーティストの撮影を始める。時にはアーティストと一緒に警察に追われるような目に遭いながらも撮影を続ける。
  3. シェパード・フェアリーなどの著名アーティストの映像も収めたティエリはついに覆面作家バンクシーとの接触に成功する。バンクシーはこれまで撮影を許可しなかったが、落書きとして消されてしまうグラフィティアートを記録するのは価値があると考えた。
  4. やがて数千本のビデオが貯まったが、ティエリはなにも考えていなかった。バンクシーはせっかくなので映画として編集することを勧める。ティエリは半年かけて映画を制作するが、そのできはあまりにもひどく、バンクシーを驚かせる。
  5. バンクシーは自分が代わりに映画を作ることを決意。ティエリには「アート活動をやってみたらどうだ」と勧める。ティエリはこれまで見てきたアーティスト達の手法をすべてパクって活動を開始する。
  6. やがて、バンクシーは「展示でもやってみたらどうだ」と勧める。するとティエリは全財産を投げ打ってロサンジェルスの大きな会場を借り、個展を開催する。展示はひどいものばかりだが、大成功を収め、数億円の売上を叩き出す。

復讐としてのポップアート

この映画のエンドロールは、ティエリを評する人たちの困惑を映して終わるのですが、その困惑ぶりが非常に興味深いです。

ティエリが単なる趣味として四六時中カメラを回していたというのがそもそもおかしいのですが、アートを始めるときにコンセプトから手法まで悪びれず丸パクリしていたり、いきなり全財産を投げ打って大きな会場を借りたりと、行動の振れ幅が大きいです。穏やかなサイコ野郎といった感じでしょうか。

それで何もなければただの変な人で終わってしまうのですが、商業的に成功を収めてしまうあたりがただ者ではないですね。ただし、そのただ者ではなさというのは「売れたんだから凄いじゃん」という単純なことではなく、「最終的には売上やオークションの落札額が作品価値の重要な指標になる現代アートにおいて、これほど価値のない作品を売り抜けるという最大の批評行為をやってのけた」という意味においてです。バンクシーはそこら辺を主張したかったみたいで、映画の構成もそうなっています。

『イグジット〜』のラストでティエリを評するバンクシー。
『イグジット〜』のラストでティエリを評するバンクシー。

僕みたいに小説を書いていたりすると、特に創作活動をしていない人から「多くの人に受け入れられるのはいいことなんだからちゃんとみんなに受け入れられて売れるのを書きなよ」というお説教をいただくことはよくあるのですが、およそ多くの創作家達がそれなりに工夫をしつつ自分の信条を曲げたり曲げなかったりで紆余曲折を経た結果ほとんど売れていないというのが現状だと思います。かつてはそういったご高説に対して「なにくそ」と脊髄反射するだけだったのですが、最近はちょっと違った考え方をするようになってきました。

AKB48について先日破滅派に書いたばかりなんですが、僕はAKB48という存在については「とりたてて美人でもないし、音楽性がどうこうというわけでもないというのに圧倒的に売れていて、これはなにがしかのことだぞ」という感想をもっています。AKB48の音楽とか容姿とかはどうでもよくて、その消費のされ方がとても興味深いです。

これは村上隆さんの作品に対してもほぼ同じで、精子をぶんまわしている像自体がどうこうというより、それがサザビーで高額落札されたという事実が面白いと思います。僕はすぐ邪推する人間なので、日本画を描いていた頃に日本美術界の閉塞感に絶望した村上氏がもっとも俗悪な作風で高額な売上を叩き出したというのは復讐だったんだじゃないかと勝手に推察しています。

芸術起業論

芸術起業論 [書籍]

著者村上 隆

出版社幻冬舎

出版日2006-06

商品カテゴリー単行本

ページ数247

ISBN4344011783

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そういえば、柄谷行人が『日本近代文学の起源』において構造分析的な批評で同時代日本文学の聖なる部分を奪いさり、その無起源性を暴き立てたのも復讐だったんじゃないかという気がしてきました。というより、批評行為自体がそもそも復讐なんじゃないかという気さえしています。

定本 日本近代文学の起源 (岩波現代文庫)

定本 日本近代文学の起源 (岩波現代文庫) [書籍]

著者柄谷 行人

出版社岩波書店

出版日2008 年 10 月 16 日

商品カテゴリー文庫

ページ数352

ISBN4006002025

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もしかしたら、秋元康という人も何か長い時間をかけて復讐しているんじゃないでしょうか。

 

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この記事はが2012 年 8 月 7 日にその他の記事として公開しました。

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