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ギュンター・グラスの持つファンタジーと現実のいい感じの間合い

高橋文樹 高橋文樹

この投稿は 5年半 前に公開されました。いまではもう無効になった内容を含んでいるかもしれないことをご了承ください。

このブログの開設2008年より前に読んでいた本の感想シリーズです。今回取り上げるのはギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』です。

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グラスはダンツィヒ自由都市という歴史のあわいに生まれた都市国家(現ポーランドのグダニスク)の出身で、国籍こそドイツですが、複雑なバックグラウンドを持つ作家です。ノーベル文学賞を受賞していますが、晩年はヒトラーユーゲント的なナチス組織に在籍していた過去を暴露するなど、数奇な人生を送りました。僕が存命中に会いたかったランキング位の作家で、大学在学中に第三外国語としてドイツ語を履修していたのはグラスの作品を言語で読もうと思ったからだったりします。ポーランドにも行きました。

『ブリキの太鼓』はダンツィヒ三部作と呼ばれるものの一つで、僕は三部作を全部読んだのですが、その中でも圧倒的な力作です。

いま手元にないのでうろ覚えなのですが、物語はオスカル・マツェラートという主人公がいかにしてこの世に生を授かったのかというエピソードから始まります。たしか精神病院にいる小人(=オスカル)の自分語りというナラティブだったはず。オスカルは母親の胎内からすでに記憶があるので、詳細忘れましたが、視点が「世界に出て行く赤子」なんですね。これはなかなか斬新な書き出しでした。

オスカルは自分の意志で成長を止めることができる特異体質の持ち主で、自発的に子供のままの姿でいます。父親に大きくなったらおもちゃ(ブリキの太鼓)を買ってもらえるといわれたので、じゃあその年齢まで成長するか、という具合。のちには高音を発してガラスを割るという超能力にも目覚めるのですが、そのせいで母親はノイローゼになってしまいます。

戦争が終わるゴタゴタのあと、母親は死んでしまい、オスカルは小人のいるサーカス団に入ります。その団長もまた小人なのですが、恋人を取り合ったりしていろんなイザコザが発生。あとなんか、スパイになったりしていたような気がします。

とまあ、こんな感じでファンタジーと第二次世界大戦の戦前〜戦後のダンツィヒを描いて行くのですが、このリアリティ・レベルのあり方がすごく不思議で、マジック・リアリズムと呼ばれる南米文学とはまたちょっと違った都市と幻想の混交が印象的。僕はこの小説で憧れた「豚の血入りソーセージ」をポーランドで食べた時に感動しました。

そうそう、文庫3冊は敷居が高いという方は映画から見ることをおすすめします。

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カンヌでパルムドールを受賞していますし、とても面白いです。頭のおかしくなった母親がうなぎを生で食べまくるシーンとか、おばあさんがジャガイモ畑で妊娠するシーンとか、発泡ソーダで年上の女の子とエロいことするシーンとか、印象的な絵がたくさんあります。

ぼくはギュンター・グラスの作品をほぼ読んだのですが、とりあえずこの『ブリキの太鼓』が代表作で一番面白いので、グラス初心者はまずこれから入るとよいでしょう。後期の作品も政治的にスキャンダラスでわりとハズレのない作家だとは思います。

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