最近、やんごとなき事情によりエロ本が4冊届き、そのすべてを読み通したのですが、「おっ?」と思う表現がありました。それがなにかというと……
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はい、「アフターピルを飲む」という表現です。しかも両方落ちゴマ。
これまでのエロ本の文脈によると、特にゆきずりの関係であってそこに避妊がなかったとしても、その後の展開がどうこうまで読者に知らされることはなかったわけです。あのとき中出しされた子はそのごシングルマザーとなり、最終的に子供を洗濯機にぶち込んで殺したとか、そんなこと知りたくないんですよね、読者は。だからこれまでは描かれなかったはずなのですが、現代ではそれを未然に回避するために、「初対面の相手に中出しを許すけれども、きちんとアフターピルで処理をする」という、ちゃんとしてるんだかしてないんだかよくわかんない属性がこのヒロインたちに付与されています。
この表現には非常に現代的な側面を帯びているように思います。なぜなら、「中出ししてもその後のことを心配する必要はない」というのが読者の特権だったわけですが、作家は別にその特権ないですからね。
最近、ほんとたまたまなんですけど、 ゆらぎ荘の幽奈さんという週刊少年ジャンプのエロ枠が炎上したじゃないですか。で、そのこと自体に関しては、小学生のときに『ザ・グリーンアイズ』っていう漫画でオッパイ描いてあるシーンを読んでいる最中に母親に怒られた僕からすると、「俺なんか汚い劇画エロで怒られたんだぞ?」という気持ちしかありません、ハイ。
価格¥660
著巻来 功士
発行ビーグリー
発売日2015 年 9 月 25 日
基本的には「そういう社会になった」というわけですね。
では、読者としてでなく、作家として考えると、こうした時勢を読みつつ表現に変化を加えていくのは大事です。たかがエロ本といっても、いつフェミニスト弁護士が着火しにくるかわからないのがいまという時代。しかも、「意図しない状況で恥ずかしい目に女性が合うのをよしとする心性」を批判されるという、たいへん難しい時代であります。内面が批判されますからね。女の子が意図しない状況で胸を揉まれる状況にむりやり追い込む男は悪いやつだと思いますが、そういう話を読みたい / 描きたいと思う気持ちまで批判の対象になると、これはもうマイノリティ・リポート決めるしかないですからね。悪い欲望は早めに摘むに限るというわです。
そうした欲望警察に対する回避策として「あらかじめ手を打っておく、しかも早い段階で」というのは、創作に携わる人間としてわりと重要な嗅覚なのではないかと、エロ漫画を4冊読んで思ったわけです。
統計的に意味はない数値ですが、もしこの落ちゴマを作家自身が用意したなら、その作家は偉いですね。もし編集者が「高校生が中出しセックスした場合はかならずアフターピルを飲んだという描写を作中に入れること」っていうレギュレーションがエロ本業界に存在していたら、素直にすごいと思います。
なお、普段はエロ本を読まない僕ですが、やはりエロ本のレベルの進化はすごいですね。僕が昔読んでたエロ本なんて、もっと汚い絵ばっかりでしたよ。みんなうまいですね。
以上です。
価格¥440
著ミウラ タダヒロ
発行集英社
発売日2017 年 7 月 4 日
マイノリティ・リポート: ディック作品集 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-13)
価格¥342
順位153,704位
著フィリップ・K. ディック
原名Dick,Philip K.
翻訳久志, 浅倉
発行早川書房
発売日1999 年 6 月 1 日