先月の終わりぐらいに早川書房から『ホット・ゾーン エボラ・ウィルス制圧に命を懸けた人々』が出たので、早速読んでみました。
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書名の通り、本書はエボラ・ウィルスについての本です。4部構成になっていて、次の通り。
- エルゴン山の影 導入部。アフリカでの3種のフィロ・ウィルス(マールブルク、エボラ・スーダン、エボラ・ザイール)の発症例紹介。
- モンキーハウス 合衆国ヴァージニア州の猿を輸入する会社で猿たちにエボラが感染する。
- 制圧 軍の研究施設ユーサムリッドとCDCがモンキーハウスを制圧して除染する。
- キタム洞窟 エピローグ。エボラの感染者が訪れたと思われるキタム洞窟を探検する。
本書は2・3部で扱われる「レストン事件」、つまり合衆国ヴァージニア州レストンの猿輸入業者でエボラが発生した事件が大きく取り扱われています。この「アフリカの奇病エボラ出血熱のウィルスが合衆国に持ち込まれた」という衝撃は、新型コロナウィルスの蔓延するいまだとわりとリアルに迫ってきます。
「レストン事件」で「もし人間に大規模感染が起こっていたら」というif映画が『アウトブレイク』です。
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個人的な感想ですが、おまけである1部と4部(舞台はアフリカ)の方がどっちかというと面白いですね。エボラの宿主はまだ厳密にはわからないらしく、最初の犠牲者たちがどうやって感染したかについて筆者は想像を巡らせています。キンシャサ・ハイウェイ(コンゴの首都を通る道路)がHIVの広がりに寄与したということは本書でも触れられている通り(※ナショジオにも記事あります)ですが、人口増加と自然破壊がエボラの流行の遠因だというのはするどい指摘ですね。
本書は2014年版に追記がなされており、それは西アフリカでのエボラ出血熱流行を受けてのことです。エボラはつい最近まで再流行していて、いまもまだ収束はしていないようですね。6月5日づけのNHKニュースでも「コンゴ エボラ出血熱が新たに流行 4人が死亡」となっています。
本書の解説は最近話題の岩田健太郎氏。プリンセス・ダイアモンド号の内情について情報発信で一躍有名になった感染症専門家ですが、本書の追記で触れられていた2014年のエボラ流行の際には現地で治療に当たられていたようです。twitterで知っている人柄とは違った冷静な筆致を読むにつれ、なんでもSNSだけで判断するのはよくないなと思いますね。
なにはともあれ、100年に一度の病疫下で読む本としては、非常に面白いので、一度読んだ方も再読をお勧めします。
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