最近めっきりePubを触っていなかったのですが、iOS5.0になってからCSS3のサポートが目覚ましく、ePub3.0の対応も縦書き時のページングさえ除けば概ね満足できるレベルまで来たので、拙著『ハムスターに水を』をePub3.0対応にしてみました。以下、その雑感です。
iBooks日本語組版対応でイケてる内容
iOS4の時点で「駄目だコリャ」と思ったていたものが改善されたケースが以下になります。
ルビ対応
これが今回個人的に一番重要だったものです。あくまで小説家としての意見ですが、ルビというのは見映え(ルビなんてカッコで書いときゃいいじゃん)やアクセシビリティ(低年齢向けに難しい感じは読みがなが振られるべき)の観点とは別に、「ルビそのものが表現の一種である」という意識があります。これから言及するそれ以外の改善点ははっきりいって見映え状の問題に過ぎないとさえ思うのですが、ルビだけは別格です。
ルビというのは、文字とそのメタ文字がバイリニアルに併記される世界的にも珍しい表記法であり、日本に印刷術が持ち込まれてからの最大の革命的副産物だと思います。
さて、そのルビ対応なのですが、以下のように書けば有効になります。
<ruby>聖剣<rt>エクスカリバー</rt></ruby>
ルビに対応していないブラウザ向けにrpというタグもありますが、めんどくさいので今回は割愛。あと、rbタグはCSS3のドラフトから削除されたっぽいので、書かなくてもいいんじゃないでしょうか。
rtタグのデフォルトサイズはよくわかりませんが、0.5emとかにしておけばそれっぽくなるんじゃないでしょうか。
テキスト両端揃え対応
テキスト両端揃えが対応されました。和欧入り交じった文章では「ひでーな」と思うこともままありましたが、両端揃えがサポートされたので、我慢できるレベルになりました。
p{ text-align:justify; text-justify:inter-ideograph; }
もしかしたら、設定 > iBooksで両端揃えで有効になるのかもしれません。
フォントをはじめとする上書き設定の無効化
iOS4.3ぐらいからだったと思うのですが、いつからかiBooks用のePub作成覚え書き(text-alignハックと明朝体とか)で得意げに書いた明朝体の指定が無効になっていました。「Apple様の指定したフォント以外使うなよこのクズ」と受け取り、半ば諦めていました。
iBooksはフォントの指定が一応できるのですが、なぜか日本語のフォントは一つも入っていません。結果として、すべての文字がヒラギノゴシックで表示されるようになってしまいました。
ところがどっこい、iBooks用のEPUBで埋め込みフォントを使うというエントリーに従って設定ファイルを追加することで、フォントの指定が有効になりました。
これでヒラギノ明朝を使うことができるようになりました。font-familyの指定はiOS5 の iBooks でフォントを指定する方法というエントリーをご覧下さい。
あと、このファイルを追加した副産物として、リンク色を指定できるようになりました。これまではa:linkとかa:visitedとかに色やテキスト装飾を指定しても無視されていたのですが、ちゃんと効くようになりました。もしかしたら、「この程度の情報にも辿り着けないアホはデザインすんじゃねーぞ」っていうAppleからのメッセージなのかもしれませんね。
圏点サポート
CSS3がサポートされたので、圏点もサポートされるようになりました。サポートのされ具合はtext-emphasis (CSS3 Text)をMobile Safariで見るとわかりやすいです。
iBooks日本語組版対応でイケてない内容
フォント指定
まだしっかり検証していない情報。フォント指定で以下のように書くことで和欧混植ができたのですが、なんとなく一つ目のフォント以外は無視されているような気がします。
font-family:georgia, 'HiraMinProN-W3', serif;
いつのバージョンだったか忘れましたが、PC版Safariがfont-familyをちゃんと読まないというバグがありました。他のブラウザは1番目のフォントがなかったら次のフォントという具合に読んでいってくれるので、上記の指定で和欧混植が出来たのですが、無理っぽいですね。
まあ、そのうち対応するでしょう。和漢混植が実現するのはいつのことやら……
縦書き
縦書きは表示されますが、ページングが逆になるみたいです。
その他
- ePub3.0になって、メタファイルがどう変わったのかを調べましたが、けっこうめんどくさかった。とりあえずイーストのサンプルをダウンロードしてことなきを得る。基本は変わってない。
- まだePub3.0対応のエディタはないっぽい。Sigilの対応に期待。基本的にはメタファイルのxmlタグ名や属性値なんて覚えたくないので、IDEの発展が待たれる。
- Androidのことはよくわからない。
- Adobe Digital Editionのプレビュー版があればPCでもそこそこ読める。
終りに
今回、旧作をアップデートしてみましたが、やはり沢山コンテンツがないと意味ないと思ったので、年内に2〜3本新作を追加してみたいと思います。あと、PDFも作ってると大変なので、しばらくは「iOS5端末を持っている人向けにePub3を出していく」という方針でいきます。
あと、立ち読みページなんかも作ってみましたので、まだ買っていない人は『ハムスターに水を』を見てみてください。。