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高学歴文系&職歴なし&30歳でWebクリエイターになる方法

高橋文樹 高橋文樹

この投稿は 15年半 前に公開されました。いまではもう無効になった内容を含んでいるかもしれないことをご了承ください。

高学歴だけど職歴のない知人にWeb業界への転職を相談されたので、それに対する返答をまとめました。

彼はほぼ同じ状態でWeb業界に飛び込んだ僕の意見を聞きたがっていたので、はじめに僕のこれまでのWebクリエイターとしての経歴をまとめました。いちおう、著者略歴というページに書いているんですが、具体的なことは書いていないので、この記事ではかなり具体的に書きました。

ちなみに、Webクリエイターというのは、「Webサイト開発者」という程度の意味です。HTMLやCSSはとてもプログラミングとは呼べないし、純粋なマークアップ・エンジニアという職はありそうでないので、Webクリエイターという呼称を便宜的に用いています。

また、この中で重要な役割を果たす友人が一人いますが、彼のことは仮名でパスカルとしておきます。ちなみに、僕はこの記事をもってパスカルを批判しようなどとはまったく思っていないので、パスカルよ、このブログを読んでいたらデゾレ=フランス語で申し訳ないの意

で、そのあとに「高学歴文系だけど職歴のない30歳目前男がWebクリエイターになる」方法を書きます。

いうなれば、ライフハックです。

僕の略歴

2007/1
前年末、靱帯断裂の手術を受けて退院。「大病のあとに精神的成長を遂げる」という文学的伝統にしたがい、「パソコンでも買うか」と、パソコンを購入。それまで使っていたのは、8年モノのdynabookで、Word2000とソリティア以外使わなかった。なぜかCore 2 DUOが入っていなければならないという妄想にとりつかれ、Lenovo 3000 n100を購入。
2007/2
友人たちとSkypeで会議し、破滅派をやることになる。この時点でWebに関する技術があるのはパスカルのみ。僕はただひたすら原稿を作成し、人を集めていた。
2007/3
破滅派オープン。パスカルの負担を軽減すべく、グラフィックの勉強を始める。しかし、はじめに作成したバナーはダサ過ぎてボツ。
2007/4
破滅派002号発刊。突如パスカルが破滅派のデザインをガラリと変える。同人諸氏から猛反発。パスカルはやる気を失う。
2007/5
破滅派003号発刊が迫る中、パスカルがイタリアへ逃亡。このままではWebサイトを更新できなくなるので、僕がHTMLの勉強をする。「速習Webデザイン」を読み、三日かけて更新。 今後も更新するとなると、Webの知識を身につける必要がある→Web制作会社へ転職を決意→内定
2007/7
慣れ親しんだ警備員のアルバイトを辞め、Web制作会社にて研修開始。が、研修中からガシガシとPowerPointを使ってプレゼン資料を作ることになる。はじめてのパワポに戸惑いながら、しゃにむに働く。 この月は余裕の300時間越え。
2007/8
研修が終わり、ちょっと余裕ができる。月250時間ぐらいの労働時間に。Javascriptなどを勉強し始める。Ajaxという言葉がすごく流行っていた。
2007/9-2007/10
新潮新人賞受賞&文学フリマ参加決定。「これって破滅派にとってチャンスじゃね?」とばかりに、雑誌を出すためのDTP勉強開始。InDesignの勉強を始め、データ入稿。おかげでDTPの知識が身についた。本ってこうやって作るんだね!
2007/11
文学フリマ参加やらなにやらでとても忙しかったが、パスカルが破滅派にWordPress(しかもMU)を導入。この頃からPDFでのコンテンツ配信をやめ、flash Paperを導入。 なるほど、更新性を向上する必要があるのだね? ふむふむ…… というわけで、XMLの勉強をはじめる。「10日でおぼえるXML入門教室」やAdobe Spryで破滅派検索エンジンを作成。検索がキラーアプリだと思っていた僕は明らかに青かったが、おかげでXPathやらJavascriptのイベント周りの諸問題に関する理解が深まった。
2008/1
歳を越し、破滅派のリニューアルを決意。WordPressの勉強を開始。ついでにPHPの勉強も開始。会社では労使交渉などもあり。
2008/2-2009/1
あんまり覚えていないけど、やったことはこんな感じ。
  • PHPでファイルアップローダーとかメールフォームとか、よくある奴は全部実際に作って運用した。あと、Smartyとか、PEARとかは本買って勉強した。携帯サイトとかも作った。hamazon.comの買い物かごをフルスクラッチで作ったのはいい思い出。
  • WordPress、Xoops Cube、Drupal、Joomla!、ECcube、Zencart、MovableType、SugarCRM、OpnePNEなどのオープンソース・ソフトウェアをローカルでインスコ&テストした。WordPRess、Xoops、OpnePNE、MovableTypeは実際に構築&運用した。
  • MooToolsの翻訳した。あと、オライリー本でPrototype.jsとScri.ptaculo.usも勉強した。Actionscript3.0も勉強したので、Web開発の表層周りは大体できるようになった気がする。あとはクオリティを上げるようにするだけ。
二年間のスキルマップ
二年間のスキルマップ

最後面倒臭くなってはしょっちゃいましたが、僕がこの二年できるようになったのは左の通りです。今はやり(?)のマインド・マップを使ってみました。

クリックして拡大してみてください。画像は相当デカいので、1400PXぐらいのウィンドウで見てください。

というわけで、この二年間で我ながらいろんな技術をつまみ食いしたなと思っています。まだまだ勉強は足りませんが、少なくとも無職になることはないと思います。

で、肝心の表題に関してですが、僕の結論は僕ができたんだから、なろうと思えばなれるです。僕が身につけた技術のすべては自習によるものです。ほとんど教わってませんし、学校にも行ってません。

ただ、僕は21歳で作家デビューしてから長年干されていたという屈辱体験と、まだそれから脱していないというスティグマの持ち主です。なんとしても小説家として成功するという思いはもはや怨念めいたものになっているので、モチベーションを下げることなくWeb上で文芸活動をするための勉強を続けられました。

そう、僕のそばにはいつも破滅派がいたのです。

そもそも僕は本業を小説家だと思っています。ただ食っていけないので働いてるだけです。今の会社に入るときも「小説家じゃ食べていけないし、Webで文芸活動をしたいから」といって受かりました。あとで上司に聞いたら当落選上ぎりぎりだったそうですが。

が、それにあたるものがない場合はこんなにできないと思います。これは自慢しているのではありません。トリップしているインドの修行僧は火の上を歩けるが、普通の人は無理っていうのと同じです。

そうした点を踏まえて、「高学歴文系だけど職歴のない30歳目前男がWebクリエイターになる」方法を書きます。

高学歴文系だけど職歴のない30歳目前男がWebクリエイターになる

1.にわかギークを目指す

Webというのはまだ歴史が浅いため、いわゆるエリートコースが少ししかありません。なので、今から国家Ⅰ種のキャリアや弁護士を目指すよりは簡単です。歴史が長く、旨みが大きい仕事というのは、科挙のような難関になるものですが、まだWebはそうなっていません。もちろん、慶応大学環境情報学部のようなエリートコースは少なからずあります

正直にいうと、一つのプログラミング言語を基礎的な業務に耐えうるレベルまで習得するのは、TOEIC900点を取るよりは簡単です。なので、高学歴=勉強が得意という長所を生かし、ひたすら勉強しましょう。安月給でもかまわないので、未経験可の会社に入るのがいいでしょう。そういうところは幾つかあります。面接が大変だとは思いますが、上手いいいわけを考えてください。大学院にいっていた場合はそれを言えばいいですし、「小説家になりたかった」はいつでも使える魔法の言葉です。

あなたが入社するところは、おそらくブラック企業です。しかし、それでもいいのです。いったん職を得たら、周囲が引くぐらい勉強しましょう。大丈夫、あなたには向いています。あなたにはギークの素養があります。大学受験を思い出してください。30歳が学ぶ「ActionScript3.0」は17歳が学ぶ「大学への数学」よりも簡単です。あなたはラジアンやサイン・コサインごときで躓くことはないでしょう。

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さて、受験テクニックを駆使してそこそこの実績を残すと、上司も見る目が変わってくると思います。おそらく、上司はこんなことを考えているはずです。

なんだ、こいつ、なよっちいガリ勉だと思ったら、けっこうがんばるじゃないか。もしかしたら、見処があるかもしれないな。よし、ちょっと試してみよう。上司の独白

2.進路を選択する

ここであなたにアシスタント・ディレクター(会社の規模によってはディレクター)をやるチャンスが回ってきます。あなたにはここで二つの選択肢が与えられます。

  1. 引き受けて、管理者としての道を歩む
  2. 断って技術者として邁進する

上司は1をやるよう進めます。その方が君のキャリアになると。この提言はいたってまともです。管理職は高度な仕事なので、高学歴のあなたに向いているのです。しかし、上司はあなたの長い空白期間が不安でもあります。もしかしたら、こいつはコミュニケーション能力がないんじゃないか、と。そう、上司はあなたを試しているのです。

実は、上司の不安は当たっています。あなたにはコミュニケーション能力がないのです。というよりも、あなたは極度のKYです。そのままエリートコースを進んでいれば、あなたはあなたをいま雇ってくれている上司よりも高い給料をもらっていたことでしょう。実際に、大学の同級生のほとんどがそうなっています。あなたは世間一般的に見て極度のKYであります。

したがって、あなたは2を選ぶでしょう。そもそもここですんなり1を選ぶぐらいならば、今頃どこかの東証一部上場企業で役職がつくのを待っている頃でしょう。あなたは自分がにわかギークになったことを誇りに思っており、自分に自信があります。自分の技術が通用しないわけがないと思っています。自分の技術で儲けられないのは営業がバカだからだとさえ思っています。

が、ちょっと待ってください。ここはとりあえず1を選んでおきましょう。なぜなら、あなたは実績させ作っておけば、いつでも転職できるのです。そう、人は実績しか見ません。面接はカーテンコールのようなものだと思ってください。人に人を見る目などないのです。就職活動において、ヒューマニティは失われているのです。

ここでは我慢して1を選びましょう。そうすれば、あなたは自分が歩んでいたかもしれないエリート街道にほんの少しだけ戻れるのです。

3.実績を積む

極度のKYであるあなたにとって、進行管理はとても辛い仕事です。世間一般では高度と言われますが、あなたには単純すぎるのです。予算やスケジュール管理はただ煩雑なだけで、本質的には単調です。あなたは儀式のような会議にうんざりし、創造性の破片もないと思うことでしょう。そして、あなたを悩ませる顧客。あなたは顧客があまりに政治的な生き物であり、本質的な知性を持ち合わせていないと軽蔑するでしょう。さらに悪いことには、あなたの顧客はあなたの友人が勤める会社の子会社だったりします。

しかし、がんばって乗り切ってください。参考になるのは分裂勘違い君劇場の「無学歴、無職歴、無実力のニートが年収500万円の正社員になる方法」です。「他人の仕事を奪う」ということは、極度のKYであるあなたにとって意味のわからないことかもしれませんが、この通りにやれば、あなたの評価が高まることは間違いありません。

実績を作ってから転職すれば、700万ぐらいそう遠くないうちに実現できると思います。その頃には35歳ぐらいになっているかもしれませんが、35歳で700万ならばかなりいい方でしょう。

もちろん、あなたにはかつての栄光を取り戻す道が残されています。かつてあなたに「末は博士か大臣か」と期待を寄せ、今はあなたを軽蔑している両親の鼻を明かす道が、です。

  • 仕事で大成功を収め、スーパーIT企業へ転職する
  • 会社を興す

ただし、どちらもそんなに楽ではないでしょう。そこらへんのブラック企業から大企業への転職は簡単ではありません。ましてや、大企業にいる人間たちは、大学まであなたより格下だった可能性さえあるのです。それはあなたのプライドが許さないでしょう。あなたは鳴り物入りで転職する必要があります。決してリクナビNEXTなんかを使ってはいけません。ヘッドハントの電話がかかってくるのを待ち、幹部候補の確約を取ってから転職しましょう。あなたはWebクリエイターなので、CIOなどを目指すのがいいでしょう。

また、会社を興すことも大変です。なぜなら、あなたは極度のKYだからです。一企業の社長になるには、スーパーサラリーマンよりもスーパーでなくてはなりません。マルチな能力が求められ、一番必要なのはコミュニケーション能力だったりします。あなたは自分で会社を興したりせず、友人に誘われるのを待ちましょう。30歳を過ぎれば、あなたの知人の一人や二人が起業します。それとなくベンチャーをやりたい言をほのめかしていれば、誘ってくるでしょう。

あなたの友人には、たくさんのエリート仲間がいるでしょう。でも、あなたは有利です。エリートはなかなか会社を辞めないので、あなたがいの一番に話に乗れば、友人は感謝してあなたを役員待遇にしてくれるでしょう。その会社がどうなるのか? それはあなた次第です。立派なCIOになってください。でも、CEOはやめた方がいいと思います。あなたは極度のKYだからです。

4.突然すべてが馬鹿らしくなったら

さて、駆け足で説明しましたが、まだ一つの懸念があります。あなたは急になにもかも馬鹿らしくなってしまうかもしれません。なぜなら、あなたは極度のKYだからです。

これは非常にありえることです。そもそも考えてみてください。

  • なぜあなたは新卒のときにすぐ就職しなかったのですか?
  • なぜあなたは司法試験などの「つぶしのきく」資格を受けなかったのですか、その能力があったにもかかわらず?
  • なぜあなたは今にいたるまで仕事をしようと思わなかったのですか?

「めんどくさかったから」あるいは「面白くなかったから」と、あなたは答えるかもしれません。が、それは嘘です。端的にいって、あなたは信じていないのです。エリート街道をまっすぐ歩むことで得られたはずのものを、あなたは嘘だと感じたのです。

したがって、あなたにはいつでもその道から外れる可能性が残っているのです。

そう、あなたがWebクリエイターとしての地位を捨てたくなったとします。捨ててかまいません。ですが、せめてディレクターになってからにしましょう。大事なのは実績です。実績さえあれば、あなたはいつでも戻ってくることができます。

もう戻ってこなかったとしても、職歴、つまり会社勤めをした経験はあなたを助けるでしょう。世の中のけっして少なくない部分が会社員なのですから。これはあなたにとって財産になります。彼ら・彼女らの気持ちがわかるのです。これは極度のKYであるあなたにとって、かけがえのない財産になるでしょう。

5.終わりに

あなたがほんとうにWebクリエイターになれるのかどうかについて、駆け足で説明しました。これが的を射たものかどうかは、あなたが実際に試してみてください。

エリートコースの途中で「こんなことは間違っている」と思ったあなたは愛すべきKYであります。あなたがただの穀潰しであるのか、それともニーチェの再来であるのかはわかりません。

がんばれ、とはいいません。愚かさとは、力を発揮できないことです。

追記

相談してきた友人に直接メールすればいいのですが、女性セブン2008/10/2号「高学歴ワーキングプア特集」に出ていた5人のうち3人が知人だったため、こういう需要もあるのかと思って書いちゃいました。不快に感じた方がいたら、ごめんなさい。

さらに追記

読んだけどモヤモヤするっていうから続きだよ。

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