何か人々を勇気づけるようなことを書かねばならないと気負ったまま三週間が経過し、ついにエイプリルフールも過ぎてしまいました。
アメリカ西部開拓時代、凄まじい災難に全てを失い、それでもなお生き残った男の物語を書いて読んだ人を勇気づけようと思っていたのですが、やっぱり違うなと気づきました。僕はそもそも人を勇気づける類いの人間ではないのです。結局のところ、焦らせたり、不安にさせたりする方が得意なのだ……というのが僕の懺悔です。
自分の無力を噛み締めながら、僕がいま何をしているかというと、金子光晴の『どくろ杯』を読んでいます。『どくろ杯』は金子夫妻の上海紀行の旅程を記した本です。どん底にいた貧乏詩人金子とその不貞の妻森三千代の道中が独特の筆致で綴られています。とにかくひどい話です。
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なぜ僕が『どくろ杯』を読んでいるかというと、冒頭部に関東大震災直後のことが綴られていたのを思い出したから。関東大震災はいわずとしれた大災害ですが、常々「縞状力学」を提唱し、現在と大正時代の類似点が気になってしかたがない僕にとっては今こそ読み直す作品でした。時間的に前後するところはありますが、好況、不況、震災、恐慌……という流れがにわかに思い起こされます。
金子は関東大震災についてこう書いています。
この瞬間以来、明治政府が折角築きあげて万代ゆるぎないつもりの国家権力のもとで、心をあずけて江都以来の習性になったあなたまかせで安堵していた国民が、必ずしもゆるぎのない地盤のうえにいるのではなかったということを、おぼろげながらも気が付きはじめたようにみえた。金子光晴『どくろ杯』中公文庫, 1976年, P.10
3月11日以降で世界は変わってしまったと思っている人は多いと思います。住んでいる地域にもよるとは思いますが、いずれにせよ、同じ気持ちでは生きられないと僕は感じています。
金子は私の不器用な旅のきっかけは、遡って、あの地震の頃にはじまったということができる
と書いています。そして、帰ってきた金子を待っていたのは、恐慌の後に訪れた先の大戦でした。金子は息子の兵役を拒否するために、松葉で息子をいぶして喘息にさせたそうです。
不安を煽っても仕方ないのですが、この先の日本がどうなっていくのか、注意深く耳を澄ませつつ、今は静かに眠ろうかなと思います。被災された方はとても快適に眠れないだろうとは思いますが、それでもやっぱり眠った方が、ずっといいはず。
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