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WordPress VIPのナイス料金表で今日からあなたもハードネゴ

高橋文樹 高橋文樹

この投稿は 8年半 前に公開されました。いまではもう無効になった内容を含んでいるかもしれないことをご了承ください。

先日、WordPress VIPの料金表を見る機会があって、「こりゃ便利だわい」と思ったので紹介します。

WordPressは自分でサーバにインストールして使う他に、WordPress.comというブログサービス(要するにアメブロ)があって、無料でとりあえずブログやりたいならそっち使うという手があります。

で、WordPress VIPとはなにかというと、WordPressの開発元であるAutomattic社が提供しているプレミアムサービスです。WordPress.comはブログホスティングサービスなので、テーマやプラグインを勝手にインストールすることはできません。独自ドメインなども有料オプションという位置付けです。そこでこのVIPサービスに入ると、お金がドカンとかかる代わりに、いろいろ付いてくるわけですね。

クライアントのページを見れば、どんなすごい会社が使っているかわかります。CNNとか、TEDとか、TechCrunchとか有名メディアサイトばっかりですね。日本だとロケットニュースとかが使っていたように思います。WordPress.comの不自由な点(テーマ・プラグインがカスタマイズできない)はVIPだとなくなります。

WordPress VIPの魅力

このVIPというサービス、僕は使ったことがないのですが、魅力として次のような点があります。

高トラフィック対策
難しいこと考えなくても、ある日突然月間1億PVになっても寝ていられる。Varnish立てて、Nginxで受けて、MySQLレプリケーションしてとかそういうのは任せられる。夜中に電話がかかってくることはない。
テーマレビュー
VIPの認定コンサルタント(10upとか)がテーマをチェックしてくれる。要するに「ヘイユー、これクソCodeね」と教えてくれるわけです。
セキリュティ対策
WAFとかそういうのもいろいろあるでしょうが、セキュリティアップデートは行われるし、古いままのバージョンで放置することもない。

とまあ、他にもいろいろあるんですが、一番の利点は「専念できる」ということですね。メディアサイトを運営していて、自社サイトの管理を自社でやる場合、いろいろ改善していく点はあると思いますが、インフラレベルのことで悩むのは嫌でしょう。高度な知識が必要なわりに、なんの問題もないときは使わない知識なんですからね。そこで餅は餅屋というわけです。

WordPress VIPの価格帯

もちろん、ここら辺の価格帯はVIPと名前が付いている以上、それなりに予算のあるところでないと採用できません。月5,000ドルからですからね。どうでしょう、高いと思いますか?

これを安く思うかどうかは、現状の体制によるんじゃないでしょうか。たとえば、3,000万PVあったとして、それなりに詳しいインフラエンジニアを雇ったとしましょう。で、その人はレスポンスが悪かったり、すぐ「できません」って答えたりするなーという悩みがあったとしましょう。「こいつメチャ生意気なんだけど、首にしたら困るは困るしなー」とかね。そうなると、その人に年収500万払っていたとして、管理費とか諸々含めると月5,000ドル超えますよね。VIPと変わらないわけです。

AWSなんかのクラウドサービスもそうですが、単体のごく限られた状況では別に安かないですね。たとえばEC2のt2.microとかは月900円ぐらいかかったはずなので、ロリポップの方が安いでしょう。しかし、サイトが超流行った場合を考えると、ロリポップから引っ越すのとかクソだるい一方、EC2ならインスタンスプラン変更してポチリーナで終わりです。WordPress VIPならその必要さえありません。

WordPress VIPの価格表に学ぶ

さて、本題です。WordPress VIPの価格表ページはOur Servicesと題されていて、ホスティングプランとサポートプランが料金としていろいろ書いてあります。それはまあいいんですが、サポートのタブをクリックすると、Web製作会社垂涎の料金表が現れるんですね。

タブにこっそりと詳細が書いてある
タブにこっそりと詳細が書いてある

このサービスは先ほど紹介した「クラウドホスティングプラン」とは異なり、「サポートプラン」、つまり自分で運営しているWordPressサイトをAutomattics社が助けてくれるんだと思います。この基本プランが年間150万から。これはまあ、そんな高くないですね。

Add-ons、つまり「追加機能」みたいなところが特に参考になります。1ドル120円で計算しています。

WordPress VIP Add-ons
コンテンツ移行 300万円〜900万円
サイトレビュー 660万円(1サイト)
スケーラビリティ 900万円
アップグレード 180万円
プラグインレビュー 60万円(1プラグイン)
テーマレビュー 300万円(1テーマ)
セキュリティレビュー 900万円(1サイト)
サイト&セキュリティ監視 72万(1年)

さて、どうでしょう。お高いですね! 「コンテンツ移行が250万もするの?」と驚かれた方も少なくないのではないでしょうか。

しかしながら、Automatticという会社がこうしたアッパーな価格を掲載してあるのはよくわかる気がします。

「サイトの移行なんてMTか何かからインポートして終わりだろ? 金取るの?」と思うのはクライアント側としてはわからなくもないですが、たとえばタクソノミーやコンテンツ、アイキャッチなどのデータをWordPressのやり方にうまく合わせていけるかどうかは、データを精査してからではないとわかりません。データの精査というのは、MySQLのアカウントをもらってざっと眺めるだけではわからないケースが多々あり、「cate1ってなんやねん」と思うこともしばしば。

で、「見積もり出して」と言われても、よくわかんないんですよね。データがどうなっているのかを精査してから見積もりを出せばそれなりに出せますけど、受注確定+最大予算が判明していない限り、僕ならやらないですね。

受ける側として、「サイトをMTからWordPressに移行してほしい」という依頼は「データを精査し、実現可能かを判別する」と「実際にインポートを行う」の2段階にわかれます。つまり、「インポートが可能かを検討する」というのがすでに工数としてデカいんですね。頼む側からすると、もちろん明細の描かれた見積書がほしいわけで、それはわかります。予算取りとか色々あるでしょう。ここに依頼者と受け手の間に利益相反があるんですね。

となると、あとはどっちが営業的に強いかとかそういう交渉になるんでしょうが、天下のAutomattic様が「300万から!」と言っているので、そんぐらいかかるんじゃないでしょうか。

自分の仕事と比べてみると、インポートを超適当にやるとしたら、CSVか何かを用意してもらってインポートして終わりです。ちゃんとしなければならない場合に何をするかというと、だいたい次のような作業項目があります。

  1. 現状のデータ構成のヒアリング
  2. Vagrantなどでインポート環境を構築する
  3. 移行するデータセットを作成(静的ファイル、SQLなどなど)
  4. 移行前環境と移行後環境の違いを精査(ソフトウェア・ミドルウェアともに)
  5. 移行用スクリプトなどを書く
  6. 移行に失敗した場合の対策を練る

ここら辺をカバーすれば、まあまず間違いなく移行は成功しますよ。どれだけ難しい移行でも1〜2ヶ月あれば成功するんじゃないでしょうか。そうなると請求額としては100万〜200万円となるわけで、WordPress VIPとあんまり変わらないですね。僕の会社なんかは管理コストとか利益とか適当に見ているので、もっと高いのが普通だと思われます。

もしかしたら「いや、そこまでやる必要はない」と思われる方もいるかもしれませんが、データ移行というのは多くの場合不可逆的な操作なので、失敗したからといって元に戻すことは難しいです。そのためにはたとえばAWSならスナップショット機能使えばいいですけど、なかったらどうすんですかという話ですね。がんばってファイル消して、SQL消して、インポートし直しですかね。本当にお疲れ様です。

あと、1,000万件のデータがあって、移行後に問題なく移行できたかどうかを把握するにはどうしたらいいのかという問題もありますよね。0.1%にミスがあっても、1万件が破損しているわけです。目グレップでお疲れ様するのか、「見るべきコンテンツリスト」を作って確認&お疲れ様するのか、Seleniumで自動スクショ機能を作成してお疲れ様してさらに目グレップするのか。ここら辺も重要な価格変動要因です。

しかも、移行を終わった後に限ってクライアント側が「そういえば言ってなかったけど、昔〇〇っていう特集ページを作っててさ、そこ壊れてるんだけど」とか言い出すんですよ。しかも移行先のテンプレートではその投稿タイプのテンプレートを用意してなかったりね。それ移行と関係ないじゃんっていう。「昔のだからもう壊れててもいいや」で済むのか、「やっぱり移行やり直してお疲れ様」となるのか、ケースバイケースです。

とにかく、Automatticが300万だって言ってるんだから、とりあえずそれぐらいかかるわけです。あとはそこから削っていってもらうという手法がクレバーですね。

プラグインレビューが一個60万というのもわかります。僕の経営する株式会社破滅派では「プラグインのカスタマイズ」というのを安くやっていたんですよ。5万とか10万とかで。まあ、実際に書いたコードベースでいうとほんと10行とかそういうのもあるんですが、これがあまりよくないビジネスでした。

5万円だと1日ですべての作業を終えないとビジネス的に割りに合わないのですが、終わらないこともときどきあったんですよ。なんかコードがクソだったとかそういう理由で。

お客さんからすると「〇〇というプラグインにおおむね満足しているが、××ができないので、できるようにしてほしい」という依頼なわけです。もうそれこそ「チャチャッとやっておいて!」ぐらいの感じでしょう。多くは簡単なケースが多いのですが、そうでない場合もあるので、そこの部分は自分の会社のギャンブルとなります。

WordPressのプラグインというのは、自分も含め、たいていの場合コードがガチャガチャなので、ギャンブルの対象としてはリスク高いですね。うまくいっても「クソコード読んだ」という感想しか残らないことが多く、1日で終わる予定が3日かかったら「クソコード読んだ上に10万損した」という気持ちになります。そんなギャンブルはもうやりたくないので、会社のサービスから取り下げることにしました。

というわけで、WordPress VIPの価格表を見るとなかなか参考になるという話でした。どのお客さんも新規では相見積もりとると思いますので、返信メールに「ここ見ておいて下さい」というのはありでしょう。話はそれからです。いくらでもハードに交渉してください。

日本国内だと、loftworkさんが価格例を出してますので、これまた参考になります。もっとも、僕みたいな零細弱小デベロッパーは「NorenとかWeb Releaseってどこで売ってるの……」という感じなので、あまり突っ込まれると何も言えなくなってしまうのですがね。終わり。

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