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App Storeから排除された電子貸本Renta!の今後を勝手に占う

高橋文樹 高橋文樹

この投稿は 12年半 前に公開されました。いまではもう無効になった内容を含んでいるかもしれないことをご了承ください。
RentaのバナーはエロかBLのみ
RentaのバナーはエロかBLのみ

今後といっても僕が具体的なことを知っているわけではないのでただの想像なんですが、久々に電子書籍ネタでブログを書いてみます。今回話題にする電子貸本Renta!というのは、電子書店パピレスの姉妹サイト的位置づけなんですが、コミック専門の電子書籍サービスです。

一応貸本屋であり「48時間100円でレンタル」と謳ってはいますが、実際に48時間レンタルを行っているのは古いヤツかお試し的な位置づけのものだけで、大半は「無期限レンタルチケット5〜6」枚なので、要は500円ぐらいで売ってるというわけですね。似たようなサービスとしてはeBookJapanというのがあり、この二つが電子書籍ビジネスの中ではわりと老舗ですね。他は以前僕に『明日のよいち!』を全巻タダで読ませてくれた太っ腹のYahoo! コミックとかもあります。

みなさんも電子貸本Renta! のバナー広告を一度は見たことがあると思うのですが、メインのコンテンツとしてはBL(ボーイズ・ラブ)とか、レディコミとか、萌えコミックだと云われています。以前Twitterでボソっとつぶやいたら仲俣暁生さん @solar1964 から「日本の電子書籍市場はほとんど漫画で活字本なんてムニャムニャ」的なつぶやきを頂いたんですが、それを体現しているようなサービスですね。

Appleによって粛清されたけど話題になってないRenta!

App Storeでは表示されなくなった
App Storeでは表示されなくなった

さて、ちょっと前から話題になったAppleによるIn App Purchase強制問題というのがあります。要するに、「デジタルデータやコンテンツの購入はアプリ内でもできなくてはならず、その場合はAppleのIn App Purchaseを使わなくてはならない」、つまり「とにかくアップル税30%を払え」ということですね。

これまでRenta!のアプリは、アプリ内部(というか、単にWebkitベースのUIWebViewをアプリとしてラップした単なるWebブラウザ)で購入する場合、自前の決済サービスを利用していたのですが、これからはIn App Purchaseを使わなくてはならなくなりました。

となると、Renta!としては、「ユーザーに提供できるサービス内容は同じなのに、いきなり30%のアップル税を徴収される」という状況になってしまいます。前に聞いた話ですと、パピレス(Renta!の運営会社)は売価の大体5割ぐらい持って行くという話だったので、アップル税はとても払えないですね。

案の定、Renta!のアプリはApp Storeから消えました。一ヶ月くらい前まではダウンロードボタンを押すところまでは行けたんですが、今は「利用できません」と出ていますね。僕は中の人ではないので、復活の予定がないとは言い切れませんが、たぶんないと思います。

Appleの圧政に耐えかね、自由なWebへ

アプリのことは一言も触れず黒歴史に?
アプリのことは一言も触れず黒歴史に?

「えっ、じゃあ僕がiPadで実験のためだけに購入したまりあ†ほりっく』はもう読めないの?」と思っていたのですが、普通にiPadのSafariで読めるようになっていました。Renta!のヘルプページには「Safariでアクセスしてね」って書いてあります。ビューアーはまあ…サイトデザインからお察しください。漫画(画像)だし、表示できればいいんじゃないでしょうか。

こうなると、「Appleひでー」とでも言いたくなりますが、よく考えたら当たり前ですね。AppleがiBookStoreという電子取次サービスをやろうとしている以上、取次は2つもいらないです。配信コストの2重取りなんかしても競争力は生まれないですからね。

さて、とりあえず自由なWebの世界へ逃げたと行っても、デバイスがAppleである以上、Mobile SafariもAppleの箱庭であって、Renta!の戦いは苦しいかなと思います。ビューアも自分で開発しないといけないですし、簡単なDRMのやり方が提供されているわけでもないですからね。

たとえば、「テキストをコピペできないようにしてほしい」という著作者・版元の要望一つ取っても、Webに出た時点でかなり難しくなりますからね…。朝日新聞のA-StandなんかもiPhone版ではコピペできないようにしてますが、FirefoxとかでUA偽装してアクセスすればうわなにするymsふぁえ(ry

まあ、いずれにせよHTMLごと保存されてちょろっとDOMられた日には完全なテキストデータが手に入っちゃいますからね。コンテンツの価値を保護して版元を説得しつつ、さらに読書体験の質を上げていくのはかなり大変だろうなと思います。Webという荒野は自由ですが、警察も裁判所もない世界でヒャッハーするのは、よちよち歩きの電子書籍ちゃんにとってまだまだ難しいんじゃないかしらん。

そしてRenta! はBLのかなたへ

なにはともあれ、Webという荒野で戦っていかざるを得ないRenta!なのですが、今後は出版社が自前の電子書籍ストアを開店しているので、取次事業としてさらに専門化していくしかないでしょうね。ちょっと前なら、「電子書籍で新しいプラットフォームをつくるぞ!」っていうとそこそこ現実感ありましたが、今はもう「思ったほど市場も伸びないし、プレイヤーすごい増えちゃって辛い」みたいな雰囲気になってますね。

萌えに関しては角川の独り勝ちっぽいので、Rentaは自前の電子書籍プラットフォームを構築する余力のない版元を相手に、BLとレディコミメインで頑張って行くんじゃないでしょうか。それか、Yappaあたりが激安プラットフォームビジネスはじめちゃったりして。

ただ最近は電子出版「緊急報告」 ――フィナンシャルタイムズ「脱獄」で、アップルが急に「猫なで声」。なんだかなあ(゜ε゜;)という記事にもあったように、Appleが方針を変える日が来るかもしれません。

ちなみに僕はAppleが日本での電子書籍事業を適当なところで投げ出すんじゃないかという疑念を25%ぐらい抱いているんですが、そんなことないですかね。Amazonは元が書店なんで、たぶん頑張って進出すると思いますが、Appleはどうなんでしょう。iWorkのPagesが何年経っても縦書きを実装しないしする気配もないのとかもよくわかんないですし、日本の優先順位が低そうですね。スティーブ・ジョブズはタイポグラフィの授業に感銘を受けたはずなのですが、日本人スタッフでジョブズに「Appleの日本語のレイアウトなんとかしようぜ」って言う人いないんですかね。それとも、ヨクナ・パトーファクパチーノには日本人いないですかね。

まあ、Appleはちょっと前にBeatlesを激推ししてたところからもわかるように、基本音楽とかが好きなオシャレな企業ですからね。オシャレな文学好きっていのは、根本のところで信用のおけない輩ですしね。僕の言ってることわかるかな。わかんねーだろーな。というわけで、終わり。

追記@20110718

なんか今日見て見たら復活してましたね。ということは、別に排除されたというわけではなかったのでしょうか。

真相はよくわかりませんが、こういうこともあるのね、という感じです。ただ、先日の価格改定の件もありますが、「Appleの事情に振り回されるんだったらもう自分たちでやるからいいや」と考えるとかところが増えてくるんじゃないでしょうか。

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